鳳凰単叢茶とはー特徴・定義・産地・製法・淹れ方・飲み方

鳳凰単叢茶(ほうおうたんそうちゃ)

<鳳凰単叢茶>
読み : ほうおうたんそうちゃ
中文 : 凤凰单丛茶 fèng huáng dān cóng chá
茶類 : 烏龍茶(広東烏龍茶)
産地 : 広東省潮州市 ※地理的表示産品
品種 : 鳳凰水仙種
時期 : (春)3月中旬~5月上旬
茶器 : 蓋碗、茶壺などを推奨

 

華やかな香りを持つ多彩な品種から作られる烏龍茶

中国の烏龍茶の代表格の1つが、広東省潮州市が原産の「鳳凰単叢茶(ほうおうたんそうちゃ)」です。
潮州市は福建省との省境にあり、その北部にある梅州市でも烏龍茶を生産しています。

鳳凰単叢茶の魅力は、何と言っても香りのバリエーションの豊かさです。
マスカットのようなフルーツの香りのするお茶もあれば、キンモクセイの花のような香りや桃のような香りのお茶まで。
「本当に青い葉っぱから出来たお茶なの?」と思うような、様々な香りを見せてくれるお茶です。

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あるきち

鳳凰単叢は、「鳳凰水仙種(ほうおうすいせんしゅ)」と呼ばれる在来品種のグループから作られるお茶です。品種によって香りが大きく違うため、その香りを活かせるように他の樹のお茶と混ぜずに製茶したことから「単叢(1本の木の意味)」と呼ばれるようになったと言われています。

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わかば

え、今でも1本の木から作るんですか?

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あるきち

現在では基本的には品種化されて育てているので、同じ品種のお茶をまとめて製茶するのが普通です。ごく一部に、その品種の原木となったような木は、古くて大きな気になっているので、こうしたものは1本1本の木で製茶され、これらは「単株」として販売されます。が、産量が1本あたり年間10kg程度で、大体売り先は決まっているので、あまり市場では見ないと思います。また、現地の値段でも1斤1万元(500gで約15万円)以上というのがザラなので、まあ、あまり買えると思わない方が良いでしょう。

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わかば

あ、聞かなかったことにします。品種になっているので十分です。。。

 

鳳凰単叢茶の定義

鳳凰単叢茶は、中国の地理的表示(GI)産品として登録されています。
その定義書による、製品の定義は以下の通りです。

潮州市の行政区域内の自然生態環境条件の下で、鳳凰水仙から分離、育成された品系、品種を選んで用い、独特の伝統的な加工技術によって製造されたもので、天然の花香および叢韵、蜜韵を有した烏龍茶。その製品茶は、それぞれの独特の天然の花香の特性により、黄梔香、芝蘭香、玉蘭香、蜜蘭香、杏仁香、姜花香、肉桂香、桂花香、夜来香と茉莉香などの香型がある。

広東省地方標準『地理的表示製品 鳳凰単叢(欉)茶』 DB44/T 820-2010 より

ポイントを整理すると、

・鳳凰水仙という品種のグループで作られること。
・天然の花のような香り、単叢ならではの余韻、蜜のような余韻を持つ烏龍茶であること。
・香りのタイプが様々あること(ここに表記してあるものを「十大香型」と呼びます)。

ということになります。

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あるきち

まず品種なんだけど、鳳凰水仙というのは在来種の名前です。在来種は基本的には雑種の集まりなので、似通った特性はあるけれど、1本1本の個性がそれぞれ違います。そんな中から、特徴のある香りだったり味わいの農家の方や研究者の方が、その木だけ選んで(分離)育てる(育成)。そうして選ばれた木のことを「品系(ひんけい)」と呼び、それが茶業試験場等での試験などを経て、国や省などの政府から認可を受けると「品種」となります。

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わかば

ん、「品系」と「品種」がちょっと分かりにくいです。

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あるきち

ざっくり喩えると、「品系」は自分たちで活動するインディーズバンドで、メジャーデビューすると「品種」になるという感じかな。で、ロックとかメタルとか、そういうい音楽のスタイルが「香型」に該当する感じ。蜜蘭香型でも、複数の品種や品系があるので。

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わかば

あ、理解。

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フーマオ

(・・・それで分かるんだ)

なお、定義書では、10種類ほどの香型が書かれています。
が、鳳凰単叢の香りはもっと多彩で、とても10種類では収まりきりません。
定義書を書く際に、分かりやすさを優先して、敢えて掲載をしていないのです。

また、同じ香型に複数の品種・品系があるので、香りのタイプの名前と品種の名前が多数出て来てしまいます。
品種・品系は無数にあり、農家が自分で命名するケースも多く、名前の付け方に一貫性が無いのも、単叢を難しく感じさせる要因の一つかと思います。

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わかば

おお、複雑そうですね・・・

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あるきち

あまり名前に振り回されずに、沢山の香りがあるんだ程度にしておき、気に入ったものの名前を拾って覚えてく感じで良いと思いますよ。

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フーマオ

飲んで美味しい。それが一番!

 

鳳凰単叢茶の産地

鳳凰単叢茶は地理的表示産品であるため、原産地の保護区域がきちんと定められています。
現在の鳳凰単叢茶の原産地保護地域は潮州市全域となっています。

もっとも、潮州市全域が指定されていますが、基本的には市内北部の鳳凰山と呼ばれる山地が中心になっています。
山地で生産されるお茶であるため、産地の標高や環境によって、お茶の相場観が異なってきています。

鳳凰山の中心地である鳳凰鎮が概ね400mぐらいの標高であり、ここから標高によって、大まかに

「低山(ていざん)」 ・・・ 400~600m前後
「中山(ちゅうざん)」 ・・・ 600~800m前後
「高山(こうざん)」 ・・・ それ以上

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あるきち

高山でも有名な山が、鳳凰山系の中にある烏崠山(ウードンさん)という山です。もっとも標高が高いと言っても、烏崠山の標高は1391mなので、それ以上の標高を表記していたら要注意だと思います。雲の上で作っているんでしょうから・・・

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わかば

高山、中山、低山で品質に違いはあるんですか?

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あるきち

一般論で言うと、標高が高い方が雲や霧に覆われる時間が長くなり、直射日光に晒される時間が短くなります。すると渋みの成分であるポリフェノールの生成が抑えられるため、渋みの少ないお茶で煎の効くお茶になることが多くなります。味わいと香りも繊細で余韻が長くなりますが、これも良し悪しで、標高の低いものの方が香りや味わいがハッキリとして強烈に出ることもあるので、用途に応じて使い分けるのが良いと思います。標高が高くなるほど、基本的には製造コストが上がるため、値段は高価になるからです。

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かおり

渋みがあるお茶を淹れるのには、ちょっとしたコツがあるの。そのコツを掴めば、どちらも美味しく淹れられるはずよ。

 

鳳凰単叢の製法・賞味期限

鳳凰単叢は、生産される茶畑の位置によって、茶摘みのシーズンが異なります。
標高の低い地域では、春茶、秋茶、雪片を。高山地域では、春茶の1回のみだったりすることがあります。

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あるきち

標高が高くなると寒いので、茶葉の成長がゆっくりなこともあって、茶摘みの回数が少なくなるね。これも高山が高価な理由の一つ。

標高の低い地域では夏茶を摘むこともありますが、基本的には渋みが強く、あまり評価は高くありません。

茶摘みは、標高の低い地域のものを除き、基本的には手摘みで行われます。
基本的には成熟度が高くなった、小開面あるいは中開面の一芽二~四葉を摘みます。

生葉はまず日光萎凋(晒青)を行い、水分を1割ほど飛ばします。
その上で、室内で静置し(凉青)、做青工程に入ります。
做青は、碰青、揺青、静置の3つの工程を繰り返すことで徐々に発酵を進めます。
適切な発酵程度になったら、釜炒りで殺青を行い、香りを固定します。
揉捻は、細長くよじれた形にします。一般に、武夷岩茶よりも撚りが強めです。
このあと、乾燥させて荒茶が出来上がりとなります。

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あるきち

伝統的な鳳凰単叢は、荒茶に焙煎を加えて、より甘い香りを引きだしていきます。武夷岩茶よりも温度は低めでじっくりと香りを引き出すことを狙っています。とはいえ、最近はバリエーションが色々出てきており、ほとんど焙煎を行わず、清香型の安渓鉄観音のような青々とした鋭い香りを活かした鳳凰単叢茶もあります。特に遅い時期の雪片や、大烏葉(だいうよう)、鴨屎香(かもしこう)などの香りの強い品種で用いられます。

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かおり

最近は荒茶の乾燥で乾燥機を使わずに、除湿機で水分を抜いていく「抽湿法(ちゅうしつほう)」という作り方の商品も出回っています。これは、とてもフレッシュな香りなんだけど、日持ちはしないわね。

賞味期限は、製法によるところが大きく、焙煎のしっかり効いたお茶は数年寝かせて飲むこともあります。
一方で、青々とした鳳凰単叢茶は、香りの低下なども考えると、緑茶と同じような消費期限と考え、できるだけ早めに飲み切った方が良いでしょう。

 

鳳凰単叢茶の特徴

ここまで書いてきた鳳凰単叢茶の特徴をまとめると、

・鳳凰水仙という品種のグループから作られ、花や果物の香りを有した烏龍茶。
・品種・品系の違いにより、様々な香りがあり、品種・品系が無数にあるため香りと味のバリエーションが豊富。
・鳳凰山の中でも標高差や環境の違いなどから、味わいに差が生まれており、そこも魅力の1つ。
・最近は発酵と焙煎の軽い軽快な鳳凰単叢茶も出てきている

ということになります。

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あるきち

ひとことで鳳凰単叢茶といっても、品種の違いによって、味わいは色々なので、飲み比べて好みを見つけると良いと思います。香りの強いお茶が多いので、香水と一緒で好き嫌いは分かれると思いますが、1つの鳳凰単叢で見限るのではなく、いろいろ試して欲しいですね。

 

鳳凰単叢茶の淹れ方・飲み方

鳳凰単叢茶は香りが命の烏龍茶です。
烏龍茶なので、お湯は熱湯で、できるだけ茶器は予熱をして、熱々の状態で入れるのがオススメです。
茶器としては、

・茶壺
・白磁の蓋碗

が向いていると思います。
現地では小さめの蓋碗(満水で110cc程度)を用いることが多いので、その淹れ方をご紹介します。

茶葉の量は3~5g程度が適量だと思いますが、産地に行くと8gぐらいの茶葉を入れることもあります。

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あるきち

標高の高い、中山以上の茶葉であれば、長く抽出しても渋みが出にくいので、少量の茶葉で淹れることも出来ます。が、低山の茶葉の場合は、香りとは裏腹に渋みを隠し持っていることが多いので、茶葉の量を多めにして、サッとすぐに出すような淹れ方の方が上手く行くと思います。

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わかば

渋みを避けるためにお湯の温度を低くするのはどうですか?

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あるきち

うーん、それは単叢の魅力である香りを捨てることになるからお薦めしないかな。単叢の持っているフルーティーな香りや花の香りは高温でこそ花開くものなので。渋みを避けるのであれば、抽出時間を短くする(茶葉量を増やす)方向をファーストチョイスにした方が良いね。あとは、茶葉にお湯を直接当てると渋みが出やすくなるので、蓋碗の肌にお湯を当てて、間接的にお湯を注ぐのも一つの手。

最初はサッとお湯を通してすぐに茶海にあけてしまい、湯通しをしておくと失敗の確率は低くなると思います。
2煎目から4煎目ぐらいまでは、火入れの香りが前面に出やすいので、短時間(10秒~20秒)ぐらいでサラサラ淹れていきます。
最初は薄めに感じるのですが、何煎も重ねて飲んでいくことで、だんだんと味わいが舌に蓄積されていき、味わいの余韻を感じることができます。

茶葉の品質によりますが、それ以降のお茶は少し長めに出すと、しばらく味わいを楽しむことができます。
もし3煎目ぐらいから、香りと味わいが急速に落ちる場合は、あまりグレードの高い茶葉ではない可能性があります。
この場合は、茶葉の量を増やして、サッと出す淹れ方をした方が、美味しい部分を上手く引き出すことができます。

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フーマオ

最初のうちは1分、2分のような長蒸らしをせずに、サッと出すのがお薦めです。現地では、わざと茶葉を崩したりして濃いお茶をキュッと飲む人もいるけど、初めての時にはちょっと辛いからね。

 

鳳凰単叢茶は、「このお茶を飲んで、中国茶にすっかりハマった」という人の多いお茶です。
ぜひ様々な香りのお茶に挑戦してみてください!

 

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