高山烏龍茶とはー特徴・定義・産地・製法・淹れ方・飲み方

高山烏龍茶(こうざんうーろんちゃ)

<高山烏龍茶>
読み : こうざんうーろんちゃ
中文 : 高山烏龍茶・高山乌龙茶 gāo shān wū lóng chá
茶類 : 烏龍茶(台湾烏龍茶・半球型包種茶)
産地 : 台湾各地
品種 : 青心烏龍種
時期 : (春)4月上旬~6月上旬 (冬)9月下旬~11月
茶器 : 蓋碗、茶壺などを推奨

 

現代の台湾を代表する烏龍茶

現代の台湾を代表する烏龍茶といえば、台湾の山地で生産されている「高山烏龍茶(こうざんうーろんちゃ)」です。

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あるきち

概ね標高1000mを越える高山地域で生産されている烏龍茶です。それぞれの産地名を冠して商品化されており、生産量が最も多くて有名なのは、台湾の中南部にある阿里山で産する阿里山烏龍茶ではないかと思います。

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わかば

この前、台湾に行ったときに阿里山烏龍茶は勧められました。色が茶色くなくてビックリしましたね。

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あるきち

高山の茶園は、お茶の生育条件としては有利な部分があるので、わりと素材を活かした軽い発酵で焙煎をしていないものが多いので、緑~金色のお茶の色になっているものが多いからね。でも、発酵と焙煎の程度の違いでバリエーションは色々あります。

 

高山烏龍茶の定義

高山烏龍茶には、国家による厳密な定義はありません。
概ね共通認識とされているのは、以下のような内容です。

・高山地域(概ね標高1000m以上)で生産されている半球型の烏龍茶。
・基本的には青心烏龍種を用いる(金萱などの他の品種を用いることも)。
・発酵程度は軽~中程度が多く、特に焙煎を施さない生茶(なまちゃ)が多め。

といったイメージです。

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あるきち

だいたい、産地名+烏龍茶と書いてあれば青心烏龍種であることが多いです。他の品種を使う場合は、たいてい「阿里山金萱茶」のように産地名+品種名の形式になっていることが多いですね。

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わかば

んー、その書き方になると高山かどうかというのは、地名で判断するしか無さそうですね・・・。

なお、高山烏龍茶も、大きく分けて発酵と焙煎の程度が軽いもの(清香・チンシャン)と重いもの(濃香・ノンシャン)の2タイプがあります。
冒頭の写真は清香タイプのものですが、より赤~茶色っぽい高山烏龍茶もあります。しかし、量としては少なめです。

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あるきち

高山地域での製茶は気温が低かったり、完全な晴天が少なかったりするので、発酵程度を高めるのは環境的にやりくいんだね。また、工場のピーク時はどんどん入ってくるお茶をこなしていかないといけないので、製茶の時間が比較的短時間で済む清香タイプに偏りがちです。

なお、一般的には「標高が高ければ高いほど良いお茶」と言われます。
が、烏龍茶はそれほど単純な問題ではありません。

標高が高い地域ほど、生産コストは高くなりますので、値段が高くなるのは事実です。
生育環境としては、標高が高い方が昼夜の気温差や霧や雲で日照が遮られる時間が増え、良好になる傾向はあります。
その一方で、標高が高くなるほど製茶環境は厳しくなり、リスクが高まります。
その値段に見合う価値があるかどうかは、製茶時の天候や設備など様々な要因が絡むので、一概には言えません。

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あるきち

標高が高い茶園は素質は高いかもしれないけれど、それを活かせているかどうかは分からない。なので、産地の名前だけで選んでも仕方がないと思います。

 

高山烏龍茶の産地

高山烏龍茶の産地は、生産量が僅かな産地を含めれば、台湾の全土に広がっています。
多くの地域では主に青心烏龍種が植えられており、製茶の方法も生産者ごとの個性はありますが、ほぼ同じような器具を使い、同じような方法で製茶されます。
このようなことから、高山烏龍茶は”土地ならではの味の違い”が大きくクローズアップされやすい面があります。

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あるきち

ワインのような”テロワール”を楽しめるのが高山烏龍茶の魅力と言えるかもしれないね。

その中でも、生産量が多い主要な産地を挙げてみましょう。

阿里山(ありさん)

台湾で、もっとも生産量の多い高山烏龍茶の産地です。
嘉義縣の阿里山一帯に広がる茶産地です(阿里山、竹崎、梅山、番路などの郷鎮が含まれます)。
この地域の標高は800~1700mほどの幅があります。傾斜が緩やかな地域では、大規模に茶園が開発されているところもあります。
他産地と比べると、比較的軽快な烏龍茶が多い印象です。

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あるきち

阿里山と言ってもかなり広くて、それぞれの環境や土壌は結構違います。大まかに阿里山っぽい傾向というのはあるのですが、より詳しいイメージをつけてもらうという観点から、より小さな地域名・集落名などを冠しているものが結構あります。阿里山でよく出てくる地名は、石棹(せきたく)、太和(たいわ)、樟樹湖(しょうじゅこ)、梅山(うめやま)などです。

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わかば

ああ、樟樹湖烏龍茶というのが美味しくて買ってきたんですけど、あれは阿里山烏龍茶の一種だったんですね。。。

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あるきち

専門店などでは良くあるパターンだね。そこまで地域を限定できるということは、ブレンドなどを行わないシングルオリジンのお茶であることが多いので、品質に自信があるということかもしれないです。まあ、そうでない場合もありますけどね・・・

 

杉林渓(さんりんけい・サンリンシー)

凍頂烏龍茶の産地である鹿谷から最も近い場所にある高山烏龍茶の産地です。
周辺には、杉林渓森林遊楽区という、森林を活かした公園があり、その名前を冠した茶区名になっています。
茶園の標高は1000~1800mほどの幅があります。

凍頂の生産者が茶園を持っている場合も多く、比較的しっかりした味わいのお茶に仕上がることもありますし、反対に透明感のある仕上げになっていることもあり、特徴は一概には言えない部分があります。

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あるきち

高山烏龍茶の中では比較的コスパに優れたお茶が多い印象の産地です。阿里山や梨山ほど有名ではないですが、その分、探すと良いお茶があるように感じます。

 

梨山(なしやま・りざん)

台湾中部の台中市、南投縣、花蓮縣の境界付近にある、台湾の最高海抜茶園がある高山烏龍茶の産地です。
台中市和平区の梨山という集落が中心地になっているため、この名前があります。
茶園の標高は1600~2600mほどの幅があり、平均海抜は他の高山茶の産地よりも高地です。
他産地との差別化のため、2000m以上の茶園産のお茶を「高冷茶(こうれいちゃ)」と呼び区別することもあります。
寒暖差が大きく、厚みのある味わいが特徴です。

茶園は台中市と南投縣に跨がり、かなり広い範囲で生産されています。
が、山が険しいため、道路沿いに茶園が点在しているという印象のため、産量は阿里山には及びません。
かつて台湾の最高海抜茶園とされた「大禹嶺(だいうりょう)」は、大部分の茶園が違法開発のため伐採されており、現在は産量が激減しています。

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あるきち

今でも市場では豊富に出回っているように見えますが、大部分は隣の集落である碧緑渓(へきりょくけい)あたりのものを大禹嶺として販売しているようです。後は、著名な産地だけに、紛い物も結構あるようです。

産地は台中市側と南投縣側に大きく分けられ、台中市側では元国営の開拓農場である福寿山(ふくじゅさん)農場や武陵(ぶりょう)農場、新佳陽(しんかよう)など。南投縣側では、華崗(はなおか)、翠巒(すいらん)、翠峰(すいほう)などがあります。

 

高山烏龍茶の製法・賞味期限

高山烏龍茶は、春茶と冬茶がクオリティーシーズンとされます。

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あるきち

標高差によってお茶のシーズンが大分違います。たとえば、阿里山の主要産地の春茶の茶摘みはゴールデンウィーク前後ですが、梨山の最高海抜の茶園などでは6月初めになることもあります。冬は梨山では9月下旬から、阿里山では10月半ばぐらいと幅があります。

茶摘みは、量産用の安価なもの、あるいは天候の急変などの場合を除き、基本的には手摘みで行われます。
基本的には成熟度が高くなった、一芽三~四葉を摘みます。

生葉はまず日光萎凋(晒青)を行い、水分を飛ばし、香りの発揚を促します。
その上で、室内で静置し、緩やかに萎凋を進めます(室内萎凋)。

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あるきち

ここで高山特有の問題が出て来ます。標高が高くなると、雲の中に入ってしまうことになるので、雲がかかると雨が降り、雲が抜けると晴れるというような猫の目のように変わる天気になります。こうしたところでは、外で日光萎凋をしているわけには行かないので、天井を透明な屋根にした室内型の日光萎凋場を建設し、場合によってはエアコンなどもかけて対応することになります。

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わかば

こういう建物も必要ということになると、確かにコストが掛かりますね。。。お値段が高いのも納得です。

做青の工程では、攪拌と静置発酵を繰り返すことで徐々に発酵を進めます。
適切な発酵程度になったら、釜炒りで殺青を行い、香りを固定します。

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かおり

高山は夜の気温は夏でも1桁台ということもあるので、酵素の働きが悪く、発酵を高めるのも大変なのよね。

揉捻は、茶葉を布にくるんで圧力をかけ、解して(玉解き)、また布にくるんで圧力をかける、という工程を繰り返します。

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あるきち

団子状にして圧力をかけることで、少しずつ丸くなる癖をつけていきます。このように基本的な製法は凍頂烏龍茶とほぼ同じです。高山特有の環境にどう合わせるか、というところだけが違いかな。

このあと、乾燥させて荒茶が出来上がりとなります。
荒茶が完成したあと、濃香タイプの高山烏龍茶は焙煎を行います。

賞味期限は、製法によるところが大きいです。
緑色の強い焙煎の施されていないお茶は、早めに飲み切った方が良いでしょう。
焙煎のしっかり効いたお茶は数年寝かせても美味しく飲めることがありますし、「老茶」としてこれを珍重する流れもあります。

 

高山烏龍茶の特徴

ここまで書いてきた高山烏龍茶の特徴をまとめると、

・台湾のあちこちの高山で生産されている凍頂烏龍茶と同じ製法で作ったお茶。
・高山の環境により育まれる素材の良さをそのまま活かすタイプが多いので、清香タイプが主体。
・産地ごとの味わいを楽しむ向きが多い。標高については、判断基準の一つであって、高ければ高いほど良いわけでは無い。

ということになります。

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あるきち

高山烏龍茶は産地の違いもそうですが、その年の天候や製茶するタイミングでの状況など、まさに一期一会なお茶です。製法や品種に限りがある分、そうした微妙な違いを楽しめるのが、高山烏龍茶の面白いところだと思います。

 

高山烏龍茶の淹れ方・飲み方

高山烏龍茶は香りが命の烏龍茶です。
烏龍茶なので、お湯は熱湯で、できるだけ茶器は予熱をして、熱々の状態で入れるのがオススメです。
茶器としては、

・茶壺
・蓋碗

が向いていると思います。
現地では茶壺を用いることが多いので、その淹れ方をご紹介します。

茶壺の大きさにもよりますが、茶葉の量は5~8g程度。
大まかな目安としては茶壺の底に丸まった茶葉が敷き詰められる程度で、茶葉が広がりきったときに茶壺の蓋に触れるぐらいが適量だと思います。

最初はサッとお湯を通してすぐに茶海にあけてしまい、湯通しをしておくと失敗の確率は低くなると思います。
1煎目は、熱湯をたっぷり注ぎ、茶壺の蓋を閉めるとちょっと溢れるぐらいが適正な湯量です。

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あるきち

茶壺は基本的に満水で使いましょう。空間があると湯温が下がるので、基本は満水です(茶芸的には美観などの観点でそこまで注がないケースもあります)。少し溢れてこぼれても良いように下にトレーなどを置いておきましょう。

高山烏龍茶のようにきつく丸まっている茶葉は、解けるまで時間がかかります。
概ね1分ぐらい待ち、1煎目を茶海にあけます。茶壺の中には、お湯を残さないよう、しっかりと最後の一滴まで出し切りましょう。

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フーマオ

お湯が少し残っていると、渋みが出てしまうので、必ず出し切ろう!

2煎目は、茶葉が開いた状態からなので、30秒ぐらいで適正な濃さのお茶になると思います(好みで増減させてください)。
3煎目以降は、徐々に味わいが薄くなっていきますので、1煎ごとに10秒程度長く待って入れるようにしていくと良いでしょう。

 

高山烏龍茶は、日本でもこだわりの強いお茶が入手しやすいお茶です。
ぜひ素性のハッキリしたお茶を飲み、それぞれのお茶の違いを楽しんでみてください!

 

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