蒙頂甘露とはー特徴・定義・産地・製法・淹れ方・飲み方

蒙頂甘露(もうちょうかんろ)

<蒙頂甘露>
読み : もうちょうかんろ
中文 : 蒙顶甘露 méng dǐng gān lù
茶類 : 緑茶(烘青緑茶)
産地 : 四川省雅安市名山区および雨城区の一部 ※地理的表示産品
品種 : 蒙山群体種およびそこから選抜された無性繁殖品種(名山白毫131、名山早311、蒙山9号など)
時期 : 2月下旬~4月上旬
茶器 : グラス、蓋碗などを推奨

 

茶文化発祥の地である、四川省蒙頂山の名茶

四川省雅安市の名山区にある蒙頂山(もうちょうさん・蒙山とも)は、茶文化の発祥の地とされる場所であり、さまざまな名茶を生んでいる場所です。
黄茶の「蒙頂黄芽(もうちょうこうが)」、緑茶の「蒙頂石花(もうちょうせっか)」、そしてこの「蒙頂甘露」が特に代表的なお茶として名前が挙がります。

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あるきち

日本ではあまり知名度のない蒙頂山なんだけど、中国では2004年に発表された「世界茶文化蒙頂山宣言」によって、茶文化の発祥地は蒙頂山ということになったので、茶文化を勉強しようと思うと中国では外せない山なんだよね。

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わかば

茶文化の発祥の地、ですか?

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あるきち

今のところチャノキは中国の南西部の雲南省、ラオスやミャンマーと接するあたりが原産地だと考えられています。それがこの四川省のあたりまでたどり着き、呉理真という人が紀元前53年にチャノキの薬効を認めて、初めて人工的に栽培をしたのが蒙頂山だということが史料に残っているそうで。そのへんに生えているのを採ったのではなく、人が意識して植えた。人が積極的に関与したのだから、これは文化が始まった場所だよね、ということね。献上茶を作っていた歴史もあるしね。

蒙頂山・皇茶園の7本の仙茶

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わかば

由緒正しい場所なんですね。でも、なんで有名じゃないんですかね?

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あるきち

四川省は内陸で日本からは遠いからね・・・。茶文化宣言が出たのが2004年なので、それ以降の情報があまり日本に入ってきていなかったこともあるかも。ともあれ、蒙頂山には色々と名茶があり、その中の1つがこの蒙頂甘露だね。

 

蒙頂甘露の定義

蒙頂山で生産されているお茶全般は、「蒙山茶(もうざんちゃ)」としてまとめて、中国の地理的表示(GI)産品として登録されています。
蒙頂甘露は、その中の1タイプとして定義されています。蒙山茶の定義書による、製品の定義は以下の通りです。

地理的表示製品保護範囲内(後述)で栽培され、伝統的な技術と現代の先進的な技術を組み合わせて製造され、特定の品質を持った茶葉。

国家標準『地理的表示製品 蒙山茶』 GB/T 18665-2008 より

蒙山茶の中には、色々なお茶があるのですが、蒙山茶の中で定義されているのは、

・蒙頂黄芽(黄茶)
・蒙頂石花(緑茶)
・蒙頂甘露(緑茶)
・蒙山毛峰(緑茶)
・蒙山春露茶(緑茶)

の5つが特色名茶として名前が挙げられています。
その他にも、蒙山炒青緑茶や蒙山甘露花茶などの花茶類も定義されています。

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あるきち

蒙頂甘露はその中でも、茶葉の形状が細く巻かれていて、産毛がハッキリ見える、というのが”特定の品質”になっています。

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わかば

ああ、確かに茶葉に白っぽい産毛が見えますね。

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あるきち

現地でも甘露と石花というのが高級緑茶の代表銘柄なんだけど、甘露は甘みやうまみに勝ったタイプで、石花は少しキリッとしたお茶という印象の違いがあるね。外観も甘露は産毛があってふわっとした雰囲気だけど、石花は平べったい形状でしっかりした雰囲気。

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わかば

作り方が違うと、味わいが違ってくるものなんですね。

蒙頂石花(左)と蒙頂甘露(右)

 

蒙頂甘露の産地

蒙頂甘露を含む蒙山茶は地理的表示産品であるため、原産地の保護区域がきちんと定められています。
地域としては、四川省雅安市名山区の全域と蒙頂山の裏側に当たる雅安市雨城区の碧峡峰鎮の一部の村が指定されています。
平地は比較的温暖なので、2月末頃から茶摘みが始まり、山の方は春分の前ぐらいに一番茶の茶摘みをしています。

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わかば

え、2月の下旬からお茶を作っているんですか?

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あるきち

雲南省や四川省は比較的温暖なのでそうだね。浙江省あたりの新茶のシーズンよりも1ヶ月は早いかな。もっとも、最初に出回るのは平地のお茶なんだけど、地元でも美味しいとされるのはある程度、標高のある山の上で作られているものだね。だから、早ければ早いほど良いわけではないよ。

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わかば

やはり山のお茶ですか。

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あるきち

中国の茶業界でよく言われるのは、”好山好水出好茶”という言葉で。好い山、好い水は、好いお茶を産出する、ぐらいの意味かな。品質にこだわる人は、山のお茶が出てくるまでじっと待つ人もいるよ。

蒙頂山の茶園

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わかば

結構急傾斜なんですね。

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あるきち

そうだね。蒙頂山の標高自体は最高峰でも1456m程なんだけれど、このあたりは四川盆地の一番西側で、ヒマラヤ山脈、チベット高原あたりから続いてきた山脈が途切れ、急に低くなる場所なんだね。西側にそびえる高い山に湿った空気がぶつかるので、この地域はとても雨の多い場所です。年間200日以上は雨が降るという、ちょっと特殊な場所ですね。森林も非常に多い地域だし、その点もお茶の生育には大いに影響していると思いますよ。

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わかば

地形や気候もお茶の品質に影響を与えるんですね。深いなぁ。

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フーマオ

タモリさんにブラタモリで訪問してもらいたい!

 

蒙頂甘露の製法

蒙頂甘露は、釜炒りで殺青(さっせい)し、輻射熱で乾燥させる、烘青(こうせい)緑茶と呼ばれるタイプの緑茶です。

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あるきち

蒙頂甘露は芽だけか一芽一葉の小さな葉っぱを摘むところから始まります。産毛の量が多い方が良いので、その年の一番茶など、グレードの高い原料を用いることが多いです。かなり細かな芽を摘むので、高級緑茶になるわけですね。

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わかば

おお、またお値段が高そうなお茶の予感・・・

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あるきち

その点、四川のお茶は比較的リーズナブルかもしれないね。浙江省などの沿岸部に比べると人件費の相場が違うので、品質の良いお茶を比較的お手ごろな価格で買えるかもしれない。

茶摘みをした後は、少し青みを抜き、水分を調整するために攤放(たんほう)を行います。
そのあとで、高温の釜に入れて釜炒りをします。
殺青が終わったら、釜の温度を低くして乾燥させながら、揉捻をして行きます。

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あるきち

蒙頂山の緑茶を作るときの代表的な技法があって、それが”三炒三揉(さんしょうさんじゅう)”というものです。釜で炒めつつ、揉み込みを行っていくのを3セットやるという意味だね。最終段階の揉み込みの時に、産毛同士が擦れ合って、産毛がハッキリと見えるので、そこで乾燥機や炭火の輻射熱で乾燥して出来上がりになる。

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わかば

釜で3回炒めて、最後は烘青で仕上げるというイメージですか?

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あるきち

そうだね。だから、龍井茶や碧螺春のような香ばしさではなく、ちょっとスッキリとした旨みの感じやすいお茶に仕上がるんだね。

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わかば

なるほど。製法が味に影響しているんですね。

 

蒙頂甘露の特徴

ここまで書いてきた蒙頂甘露の特徴をまとめると、

・細く巻かれた茶葉の形をしていて、ふわふわの産毛が表面を覆っている。
・繊細な新芽を使ったお茶でうまみや甘みが豊富。烘青で仕上げるので透明感のある味に。
・旬の時期が春分の時期より前で、出回るのが比較的早い。ただし、日本では少ない?

ということになります。

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あるきち

扱っているお店が少ないかもしれないけれど、品質の良いものは本当に美味しいお茶ですよ。淡いかな、と感じても飲んでいるうちに甘みやうまみがドーンと広がっていく奥行きのある味わいです。

 

蒙頂甘露の淹れ方・飲み方

蒙頂甘露は、とてもかわいらしい新芽が綺麗な形で戻り、目でも楽しめるお茶です。
そうした姿を愛でられるよう、

・ガラスの器(グラス、ピッチャー)
・白磁の蓋碗

などを使うと、より映えるのではないかと思います。
基本的な中国緑茶の淹れ方と同じです。

蒙頂甘露は繊細な茶葉なので、洞庭碧螺春と同じように、先にお湯を注いでから茶葉を入れる「上投法」を用いるのも良いでしょう。

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あるきち

産毛が特に多いような繊細なお茶の場合は、うまみも強いことが多いので、好みにもよりますが少し低めの温度で85℃くらいでうまみをじっくり出すのも良いでしょう。少しキリッとしたニュアンスが欲しい場合は、ちょっと湯温を上げると上手く行くと思います。

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かおり

蒙頂山のお茶は淡いながらも味わいが豊かなことが多いので、最初は少なめの茶葉で淹れるといいかもね。

 

蒙頂甘露の保存

蒙頂甘露は緑茶なので、フレッシュなうちに飲み切りたいお茶です。
開封したら、できるだけ早く飲み切るのが、緑茶を美味しく飲むコツです。
一度開封した袋は、できるだけ中の空気を抜いた上で、きちんと密閉し、直射日光の当たらない冷暗所に保存しましょう。

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あるきち

蒙頂甘露は産毛のふわふわが見えるところも魅力なので、袋にできるだけ余分な力が掛からないように、袋ごと缶に入れておくと安心だね。

長期保存したい場合は、封を切らない状態にして冷蔵庫や冷凍庫に入れておくと、色や味を比較的長く保つことが出来ます。
ただし、冷蔵庫や冷凍庫に入れたお茶は一度出したら、冷蔵庫・冷凍庫には戻さない方が良いです。
結露が起こって、お茶が台無しになることも多いからです。また、においの強いもののそばには置かないようにしましょう。

 

蒙頂甘露は、味わいが柔らかく透明感のある美味しいお茶だと思います。
見かけたら是非お試しください!

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