六安瓜片茶とはー特徴・定義・産地・製法・淹れ方・飲み方

六安瓜片茶(ろくあんかへんちゃ)

<六安瓜片茶>
読み : ろくあんかへんちゃ
中文 : 六安瓜片茶 liù ān guā piàn chá
茶類 : 緑茶(烘青緑茶)
産地 : 安徽省六安市の一部地域 ※地理的表示産品
品種 : 独山小葉種、斉頭山中葉種と優良品種
時期 : 4月中旬~5月中旬
茶器 : グラス、蓋碗などを推奨

 

ユニークな製法の安徽省の名茶

中国の高級緑茶の多くは、小さな芽を使ったお茶ですが、この六安瓜片茶は芽を使わず葉っぱの部分だけを用いて作るというユニークな緑茶です。
葉っぱの部分を折りたたむようにして成形すると瓜の種の形に似たことからこの名があります。

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あるきち

芽の部分を使わないお茶というのは、かなり珍しいと思います。葉っぱの部分のみを使うので、味わいは少ししっかり目ですね。

葉っぱの成熟度が必要なこともあり、製茶のシーズンは少し遅めで、穀雨(4月20日)頃から始まります。
穀雨の前に僅かに摘まれることもあり、これは六安提片(ろくあんていへん)の名で呼ばれ、高級品として僅かな量、流通します。
六安瓜片よりも、味わいはやや淡いのですが、その分、味わいの柔らかさと透明感を感じるお茶になります。
また、梅雨に入ってから、大きくなった茶葉で作られるものもあり、これは六安梅片(ろくあんばいへん)と呼ばれ、ざっくりとした普段飲みのお茶になります。

 

六安瓜片茶の定義

六安瓜片茶は、中国の地理的表示(GI)産品として登録されています。
その定義書による、製品の定義は以下の通りです。

片茶ともいう。地理的表示製品範囲内で生産され、採片(さいへん)あるいは扳片(ばんへん)によって取得した生葉原料を独特の加工技術で製造した、瓜に似た形の片形の緑茶。

安徽省地方標準『地理的表示製品 六安瓜片茶』 DB 34/T 237-2011 より

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あるきち

採片と扳片というのは六安瓜片ならではの茶摘みだね。採片というのは、一芽三葉の成熟度になったお茶の木から、狙った葉っぱだけを直接採取する方法。扳片はとりあえず一芽三葉で茶摘みをして、戻ってきてから芽や葉、茎に分解していく方法だね。どちらでもOKということになっているけれど、葉っぱを揃えて選り分けることがまずは大事になります。

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わかば

葉っぱだけ選んで摘むのも大変そうだし、摘んできたのを分解するのも大変そうだなぁ・・・

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あるきち

六安瓜片は少し深めの緑色をしているんだけど、この色のことを「宝緑(ほうりょく)」と表現しているね。また、製茶をしたお茶には白っぽい部分があって、これのことを「有霜(ゆうそう)」と言ったりしています。六安瓜片の専門用語だね。

 

六安瓜片茶の産地

六安瓜片茶は地理的表示産品であるため、原産地の保護区域がきちんと定められています。
定義書が制定された2011年時点の行政区域で行くと、

六安市裕安区石婆店鎮、石板沖郷、独山鎮、西河口郷、青山郷、金寨県響洪甸鎮、青山鎮、燕子河鎮、響斉弁、天堂寨鎮、古碑鎮、張沖郷、油坊店郷、長嶺郷、槐樹湾郷、張畈郷、霍山県仏子嶺鎮、黒石渡鎮、諸仏庵鎮、磨子潭鎮、漫水河鎮、太陽郷、大化坪鎮、金安区毛坦廠鎮、東河口鎮、舒城県暁天鎮など5つの区県26の郷鎮

となっています。

産地としては大別山という山の北側の麓が原産地になっていて、特に金寨県麻埠鎮(響洪甸鎮と響斉弁が2008年に合併)の斉山村の蝙蝠洞のものの評価が高いことで知られています。

定義書にある、原産地の指定地域は以下の地図で示されています。

安徽省地方標準『地理的表示製品 六安瓜片茶』より

 

六安瓜片茶の製法

六安瓜片茶は、釜炒りで殺青(さっせい)し、そのあと輻射熱で乾燥させる、烘青(こうせい)緑茶と呼ばれるタイプの緑茶です。

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あるきち

茶摘みについては最初に紹介した通りで、2枚目の葉っぱなら2枚目の葉っぱ、3枚目の葉っぱなら3枚目の葉っぱで統一して、製茶をします。まずは4~6cmほどの厚身をもたせて茶葉を置き、4~6時間ほど攤放(たんほう・六安瓜片茶では攤凉と呼ぶ)をします。ここで水分と青い草のような香りを取り除いたあと、殺青を目的とした釜炒り(青鍋・あおなべ)を行います。そのあと、温度を少し落として、もう一度釜に入れ、成形を目的とした釜炒り(熟鍋・じゅくなべ)を行います。

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わかば

最初は釜で炒るんですね。

釜炒りが終了した段階では水分量は45%ぐらいあるので、ここから乾燥に入って行きます。
六安瓜片の乾燥は、伝統的には炭火を用いて行われます。
乾燥は、毛火、小火、老火の三段階に分けて行われるのですが、最終工程の老火では、強い火力を用いて、一気に乾燥させていきます。
火力が強いので、大きな籠を2人がかりで持ち、籠を揺すってひっくり返すことを150回あまり繰り返して、乾燥させます。
この時に香ばしい香りと茶葉の表面に霜のような白い部分がつきます。

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あるきち

最初の毛火、小火では、茶葉から清らかな香りを引き出しながら乾燥し、最後の老火で香ばしさを出すイメージだね。六安瓜片の魅力はこの乾燥工程によるところも大きいかもね。最近は機械で加工することも増えているけれど、その場合でも老火の工程は、手作業でやることが多いみたい。

 

六安瓜片茶の特徴

ここまで書いてきた六安瓜片茶の特徴をまとめると、

・葉っぱのみを使った珍しいお茶であり、葉っぱを折りたたむようにして瓜の種状になっている。
・緑茶としては比較的成熟した葉を使ったお茶なので味わいはしっかりしている。
・乾燥の方法に特徴があり、烘青緑茶らしい透明感に加えて、香ばしさも有する。

ということになります。

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かおり

六安瓜片茶は歴史的に有名なお茶でもあるし、周恩来首相が亡くなる前に、友人である葉庭将軍を思い出して、六安瓜片を所望したという逸話もあるお茶なの。

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あるきち

あまり日本では出回ることも少ないかもしれないけれど、似たタイプが無いお茶なので、見つけたら是非試してみてください。

六安瓜片茶の淹れ方・飲み方

六安瓜片茶は、鮮やかな緑色の葉が綺麗に戻り、目でも楽しめるお茶です。
そうした姿を愛でられるよう、

・ガラスの器(グラス、ピッチャー)
・白磁の蓋碗

などを使うと、より映えるのではないかと思います。

グラスの場合は、耐熱ガラスを推奨します。
茶葉をグラスの底がうっすら隠れるぐらい(グラスの大きさにもよりますが1~2g程度)に入れ、お湯(85~90℃)を茶葉がひたひたになる程度にほんの少し注ぎます。
お湯を吸った茶葉から、お茶の香りがふわっと立ちのぼりますので、その香りを少し楽しみながら、グラスを少し傾けたり回したりしながら、茶葉とお湯を馴染ませます(この動作を「浸潤泡・しんじゅんほう」と言います。)。

その後で、お湯をグラスに8分目ぐらいまで注ぎます。

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あるきち

どうしても最初はお茶の葉っぱが上に浮いてしまうけれど、息を吹きかけるなどして茶葉を除けながら飲んでください。お湯を注ぎ足していくと、徐々に沈んでいくと思います。

お湯が3分の1ぐらいまで飲んだら差し湯をしていくようにすれば、味がなくなるまで飲むことができます。

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フーマオ

もし、濃すぎたらお湯を足せば良いし、薄すぎたら時間を少し待つか、茶葉を足せばOK。六安瓜片茶は緑色が比較的強いお茶なので、味のイメージは色で見分けられるかもね。

 

六安瓜片茶の保存

六安瓜片茶は緑茶なので、フレッシュなうちに飲み切りたいお茶です。
開封したら、できるだけ早く飲み切るのが、緑茶を美味しく飲むコツです。
一度開封した袋は、できるだけ中の空気を抜いた上で、きちんと密閉し、直射日光の当たらない冷暗所に保存しましょう。

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あるきち

六安瓜片茶は茶葉が砕けやすいお茶でもあるので、袋にできるだけ余分な力が掛からないように、袋ごと缶に入れておくと安心かな。

長期保存したい場合は、封を切らない状態にして冷蔵庫や冷凍庫に入れておくと、色や味を比較的長く保つことが出来ます。
ただし、冷蔵庫や冷凍庫に入れたお茶は一度出したら、冷蔵庫・冷凍庫には戻さない方が良いです。
結露が起こって、お茶が台無しになることも多いからです。また、においの強いもののそばには置かないようにしましょう。

 

六安瓜片茶は、中国緑茶の中でも少し異端の存在ですが、味がしっかりしている分、日本茶を飲まれる方にも合うお茶だと思います。
見かけたら是非試してみてください。

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