白毫銀針とはー特徴・定義・産地・製法・淹れ方・飲み方

白毫銀針(はくごうぎんしん)

<白毫銀針>
読み : はくごうぎんしん
中文 : 白毫银针 bái háo yín zhēn
茶類 : 白茶(芽茶)
産地 : 福建省の一部地域(福鼎、政和、建陽)
品種 : 福鼎大白茶、政和大白茶など
時期 : 3月下旬~4月中旬
茶器 : グラス、蓋碗などを推奨

 

太い芽を使った白茶の高級品

白茶の中でも、高級品として知られるのが、芽の部分だけを用いて作った白毫銀針(はくごうぎんしん)です。

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あるきち

高級品というのは、茶摘みなどの手間がもっとも掛かることから、お値段が高くなりがち、という意味合いです。ふっくらした芽の部分だけを選んで用いるので、芽の甘みや柔らかな口当たりが楽しめるお茶です。

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わかば

高級品だから美味しいというわけではないのですか?

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あるきち

お茶の値段が高いというのは、基本的にはコストが高いのでお値段が高いと思ってください。美味しいから高いわけではないです。ただ、逆説的に聞こえるかもしれませんが、美味しくなければ高値で売れないし、少なくともリピートはしないと思います。コストをかけるだけの良さはあるということですね。

 

白毫銀針の定義

白毫銀針は、中国の国家標準で明確に製品が定義されています。
その定義書による、製品の定義は以下の通りです。

3.1 白毫銀針 Baihaoyinzhen

大白茶あるいは水仙茶樹品種の単芽を原料とし、萎凋、乾燥、揀剔(かんてき)などの特定の工程を経て製造された白茶製品。

国家標準『白茶』 GB/T 22291-2017 より

いくつか明確な条件が示されています。
まず1つ目は品種の指定で、”大白茶”あるいは”水仙”の品種を用いることが決められています。

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あるきち

白毫銀針はふっくらした芽と産毛の豊富さが重要になるので、それを満たす優良品種とされているのが大白茶種というものです。これは1つだけでは無くて、代表的なものでは福鼎大白茶、政和大白茶、福安大白茶などの”大白茶”という名前の入っている品種になります。あとは伝統的に用いられている水仙品種までは許容されますが、それ以外の品種、たとえば在来種だったり、雲南大葉種などを用いるのはダメです。

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わかば

白毫銀針と名乗るには、大白茶か水仙じゃないといけないんですね。なるほど。

もう1つの条件が、単芽。すなわち、芽だけで作ること、です。

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あるきち

上質な白毫銀針かどうかというのは、この芽がどのくらいふっくらして、産毛に多く覆われているか、ということになります。基本的に春の一番茶の芽がもっとも太くて産毛も多く、そのあとに出てくる二番茶の芽などは痩せて、産毛の量も少なくなります。ある意味、外観である程度の品質を推し量れるのが白毫銀針です。

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わかば

見た目で大体分かっちゃうものですか?

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あるきち

もちろん、野生化したようなお茶などは見映えが悪くても、美味しかったりするんだけどね。そうでなければ、外観は気にした方が良いと思います。白毫銀針は英語ではSilver Needleと呼ばれるので、太くて白い針が良い、と覚えれば良いかもね。

 

白毫銀針の産地

白毫銀針をはじめとする白茶は、主に福建省の3つの地域で作られており、それらはそれぞれ原産地保護制度の対象になっています。
それらを記載すると以下の通りです。

福鼎(ふくてい)白茶 福建省寧徳市福鼎市の行政区域内
政和(せいわ)白茶 福建省南平市政和県の行政区域内
建陽(けんよう)白茶 福建省南平市建陽区の行政区域内
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あるきち

ここでは3つの産地を挙げましたけど、現在市場で圧倒的に多いのが福鼎で、続くのが政和で、この2箇所が大きな産地になっています。市場で見かけるのは大体この2つでしょう。建陽は、水仙品種の原産地であり、白茶の歴史は福鼎よりも古いと言われていますが、産量自体は多くありません。

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わかば

福鼎と政和だと何か違うんですか?

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あるきち

用いられる品種と製法が違うので、それぞれ特徴があります。あと産地の環境で行くと、福鼎は比較的海に近い低地で、政和は山の中なので標高的には少し政和が有利かな。バンバン増産して大きな会社が出来ているのは、福鼎の方が多いと思います。

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かおり

最近は福建省以外でも白茶を作りはじめているけれど、品種の指定があるので、白毫銀針は基本的には福建省産のみと考えて良いかも。

 

白毫銀針の製法

白毫銀針の製法は、白茶の製法そのままなのですが、白茶は産地によって作り方、とくに萎凋の方法が異なります。
主力産地である福鼎と政和の違いをご紹介します。

福鼎の製法

福鼎では日光萎凋をメインにした製造を行います。
摘み取った茶葉を薄く広げてザルの上に置き、太陽光の下で干します。
8~9割乾燥したら、青っぽい葉を取り除いた上で、伝統的には炭火と焙籠を使って、現代的には乾燥機を使って乾燥します。

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あるきち

太陽光に晒しての萎凋がメインなので、香りは爽やかで花っぽさがメインになります。

政和の製法

政和では室内萎凋をメインにした製造を行います。
基本的に最初は室内萎凋を行って、最後に日光萎凋を行います。
8~9割乾燥したら、青っぽい葉を取り除いた上で、伝統的には炭火と焙籠を使って、現代的には乾燥機を使って乾燥します。

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あるきち

室内萎凋を長く取るので、香りは少し籠もった印象になりがちです。ただし、発酵が十分にできることも多く蜜っぽい香りが出てくることもあります。

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わかば

うーん、どちらの方が美味しいんでしょうね?

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あるきち

これは好みによると思うので、何とも言いにくいね。白茶の消費地の一つが香港なんだけれど、香港でもお茶屋さんによっては、うちは福鼎しか入れない、政和しか入れない、というこだわりがあるくらいなので。試してみるのが一番だと思うけれど、最近流通しているのは大体、福鼎かな。政和はちょっとレアな存在なので、見つけたら試してみると良いかも。

いずれにしても伝統的な白毫銀針の製造には天候の良し悪しが大きく関わります。
白茶は太陽の光や風、湿度などの影響をシンプルな製法であるがゆえに受けやすく、挽回のしようが無いので、製茶時の天候が品質を左右します。
もっとも、最近は空調などを完備した現代的な工場も増えてきていますが、どうしても平均的な品質になってしまいます。

また、白毫銀針は製茶したての段階では、少し青みを感じることも多いです。
こうした青みが苦手な方は、しばらく密封した状態で放置しておくと、青みの成分が抜けて、美味しく飲めることも多いです。

 

白毫銀針の特徴

ここまで書いてきた白毫銀針の特徴をまとめると、

・太い芽と多くの産毛(白毫)を持ったお茶であり、甘みとうまみが印象的な白茶。
・産地の違い(福鼎と政和)により製法が違い、味も異なる。
・少し青みを感じることもあり、その場合は、少し寝かせてから飲むと改善することもある。

ということになります。

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あるきち

ふわふわでなかなか見栄えの良いお茶なので、そうした部分を活かせるような茶器で淹れると美しいと思います。

 

白毫銀針の淹れ方・飲み方

白毫銀針は、背の高い器で淹れると茶葉が踊るように上下し、視覚的にも楽しめるお茶です。
そうした姿を愛でられるよう、

・背が高めのガラスの器(グラス、ポット)

などを使うと、より映えるのではないかと思います。
煎を重ねて淹れる場合は、蓋碗を使うのでも良いと思います。

グラスの場合は、耐熱ガラスを推奨します。
淹れ方自体は緑茶とほぼ同じやり方でOKです。
茶葉をグラスの底に入れ(グラスの大きさにもよりますが2~3g程度)、お湯(80~90℃)を茶葉がひたひたになる程度にほんの少し注ぎます。
お湯を吸った茶葉から、お茶の香りがふわっと立ちのぼりますので、その香りを少し楽しみながら、グラスを少し傾けたり回したりしながら、茶葉とお湯を馴染ませます。

その後で、お湯をグラスに8分目ぐらいまで注ぎます。
お湯を一点に集中して、グラスの中が対流するように注ぐと、茶葉が上下に踊っているような状態になると思います。
湯を入れたら、そのまましばらく待ちましょう。

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フーマオ

白茶は揉捻をしていないので、味の出方が遅いです。そこをゆっくり待つのが白毫銀針ならではの楽しみ方!

茶葉が少し沈んできたら、飲んでいきます。
味わいが少し淡いようなら、ひたすら待ちましょう。

お湯が半分ぐらいまで減ってきたら、差し湯をします。
以後、だいたい、グラスの3分の1ぐらいまで飲んだら差し湯をしていくようにすれば、味がなくなるまで飲むことができます。

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わかば

白毫銀針は優雅なお茶ですね。

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あるきち

この淹れ方は、時間的にも余裕があるときの飲み方だね。急ぐ場合は、蓋碗で淹れる方が良いと思いますが、じんわりとお茶の味が出てくるのを待つのが、白毫銀針の飲み方としては良いんじゃないかと個人的には思います。雰囲気のある茶館では頼みたくなるお茶です。

 

白毫銀針の保存

白毫銀針は白茶なので、多少寝かせても美味しく飲むことができます。
もっとも、開封したらできるだけ早く飲み切るのが、美味しく飲むコツです。
一度開封した袋は、できるだけ中の空気を抜いた上で、きちんと密閉し、直射日光の当たらない冷暗所に保存しましょう。
長期保存したい場合は、密封して冷暗所に置いておくだけで大丈夫です。

最近の傾向でもあるのですが、その年の新茶などは、少し青い草のような香りを感じることもあります。
もし、そのような状態であれば、すぐに密封して、一夏越して、秋になってから飲んでみることをお薦めします。
味わいがまろやかになり、白茶の熟成の妙を感じることが出来るでしょう。

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あるきち

最近は、緊圧した白毫銀針というのもあります。白毫銀針をはじめとした白茶は結構嵩張る茶葉が多いので、長期保存前提なら、こうしたものを買うのも良いかもしれないね。

 

白茶の種類の中でも、白毫銀針は香りよりは甘みとうまみを感じやすいお茶です。
白牡丹などの他のお茶とも飲み比べてみると、キャラクターの違いが分かって面白いと思います。

 

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