安吉白茶とはー特徴・定義・産地・製法・淹れ方・飲み方
安吉白茶(あんきつはくちゃ)
<安吉白茶>
読み : あんきつはくちゃ
中文 : 安吉白茶 ān jí bái chá
茶類 : 緑茶(烘青緑茶/炒青緑茶)
産地 : 浙江省湖州市安吉県 ※地理的表示産品
品種 : 白葉一号
時期 : 3月下旬~4月下旬
茶器 : グラス、蓋碗などを推奨
一本の白いお茶が、今や一大産業に
近年、中国茶の中で急速な成長を収めたお茶として、名前が挙がるのが安吉白茶です。
安吉白茶は、1970年代に安吉県の山中で見つかった一本の白化したお茶が見つかったところから、その歴史が始まります。
1980年代初めに専門家の手によって品種としての育成が始まります。
そして1991年、”玉鳳”という仮の品種名がつけられ、全省名茶コンテストに入賞。
2000年に、ブランド名が”安吉白茶”、品種名が「白葉一号(はくよういちごう)」という名前で確定しました。
その後もこのお茶の快進撃は続き、今では西湖龍井茶などと匹敵する価格を持つ名茶ブランドに成長しています。
安吉白茶は、今では安吉県の経済を牽引する一大産業にまで成長しています。
このお茶の成功は、まさにチャイニーズドリーム(中国夢)で、貧しかった地域がお茶で豊かになった成功例の一つとして挙げられているね。
この「白葉一号」品種は、他の地域での導入も進んでおり、同じ品種から作られた名茶も登場しています。
(江蘇省溧陽市の天目湖白茶、貴州省遵義市正安県の正安白茶など)。
白茶という名前ですけど、緑茶なんですね。
そこがちょっとややこしいんだけど、製法は完全に緑茶なので、味わいもまんま緑茶です。
安吉白茶の定義
安吉白茶も、中国の地理的表示(GI)産品として登録されています。
その定義書による、製品の定義は以下の通りです。
浙江省湖州市安吉県で生産され、“白葉一号”の茶樹から摘み取られた生葉を加工することによって、定義書の規定する必要条件に適合した緑茶類の茶葉。
国家標準『地理的表示製品 安吉白茶』 GB/T 20354-2006 より
白葉一号という品種は、その名の通り、”葉が白くなる”ことのある品種です。白っぽくなるときは、葉緑素の含有量が減り、その代わりにアミノ酸の含有量が増えるので、うまみの強いお茶になります。定義書では、遊離アミノ酸として5%以上あることが安吉白茶の条件になっていて、これは一般的な緑茶の2~3倍のアミノ酸含有量ということになります。
アミノ酸が多いということは、うまみが強いということね。
ほほう。白っぽいとアミノ酸が増えるんですね。
ただ、いつも白いわけではなくて、白葉一号の場合は気温が23℃以上になると緑に戻ってしまうので、季節的には春先の一番茶の頃がもっともアミノ酸が豊富ということになるね。淹れた後の茶葉の白さの度合いで、ある程度の時期も推測できるかも。
また、安吉白茶には形状の異なる2種類の安吉白茶があると定義されています。その2種とは、
・鳳形安吉白茶 ・・・ 条形のもの
・龍形安吉白茶 ・・・ 扁形のもの(龍井茶と同じ形)
です。
一般的な安吉白茶は鳳形で、一部、龍形のものは白茶龍井のような名前で出回っていますね。基本的に高級なお茶は鳳形になっていることが多いと思います。
なお、品種については、定義書では「白葉一号」のみとなっていますが、最近はよりうまみの強い品種を探そうと「白葉一号」から分岐した品種やその他の白化品種や黄化品種なども開発されていて、黄金白茶、安吉黄金芽、安吉黄茶などさまざまな品種がしのぎを削っています。
安吉白茶の産地
安吉白茶は地理的表示産品であるため、原産地の保護区域がきちんと定められています。
地域としては、浙江省湖州市安吉県のみと定められています。
安吉県の面積は1,886㎢で、日本に置き換えると大阪府(1,896㎢)と香川県(1,876㎢)の間ぐらいの大きさだね。当然、安吉県の中でも標高の高低や環境の良し悪しはあるので、品質や価格に反映されています。
安吉白茶の製法
安吉白茶は、釜炒りで殺青(さっせい)しますが、タイプによって乾燥方法が異なります。
鳳形安吉白茶は、乾燥に輻射熱を使う烘青(こうせい)緑茶で、龍形安吉白茶は釜炒りで乾燥する炒青(しょうせい)緑茶になります。
鳳形の方は透明感があるのですが、ものによっては少し青みを感じることもあります。龍形の方は龍井茶同様の香ばしさとうまみがあります。龍形の方が機械化が容易なので、比較的ローコストにお茶が作られるので、時期の遅い茶葉が回されることもあります。
形だけでなく製法も違うんですね。味も違う、と。。。
茶摘みは、特級は一芽一葉、一級は一芽二葉、二級は一芽二、三葉で摘むことが条件になっています。
実際の市場では、特級の中でも特一級、特二級のように芽の細かさでより細かな区別をされて販売されています。
茶摘み後、水分を調整し、青みを抜くために攤放(たんほう。安吉白茶の表現では攤青)をします。
その後、釜炒りで殺青をし、龍形安吉白茶は、龍井茶と同様に加工されます。
鳳形安吉白茶は、殺青後に揉捻を行って形を作り、乾燥機や焙籠を使って乾燥されます。
安吉白茶の特徴
ここまで書いてきた安吉白茶の特徴をまとめると、
・安吉白茶という名前ですが、このお茶は緑茶です。
・細長い形の鳳形(こちらが一般的)と平べったい龍井茶タイプの龍形の2種がある。
・アミノ酸の豊富な白葉一号という品種を用いており、うまみが強いのが特徴。
・鳳形はうまみと透明感、龍形はうまみと香ばしさがミックスされた味わい。
ということになります。
安吉白茶は日本人が飲んでも美味しいと感じる人の多い中国緑茶だと思います。
お手ごろ価格のものは緑が強いものが多いので、白さと独特のうまみを感じてみたい場合は、ちょっと良いものを買いましょう!
安吉白茶の淹れ方・飲み方
安吉白茶は、とてもかわいらしい新芽が綺麗な形で戻り、目でも楽しめるお茶です。
そうした姿を愛でられるよう、
・ガラスの器(グラス、ピッチャー)
・白磁の蓋碗
などを使うと、より映えるのではないかと思います。
ここでは、蓋碗で直飲みする方法をご紹介します。
少し大きめサイズの蓋碗(200ml以上)の蓋碗を用意します。
緑茶を直飲みする場合の蓋碗は、急須代わりにすることは無いので、ある程度の容量があることが好ましいです(厚みがあり、重いものでも構いません)。
茶葉は容量によりますが、写真の蓋碗(200ml程度)で1~2g、もう少し大きいものであれば3~4gほどを入れます。
この茶葉の量はお茶の品質にもよります。少し味わいが弱いようでしたら、茶葉を多めにしても良いと思います。
茶葉を蓋碗に入れ、茶葉がひたひたになる程度にお湯(80~90℃)を注ぎます。
ふわっとお茶の香りがしてくると思いますので、その香りを聞きながら、少し蓋碗を回して、茶葉をお湯に馴染ませます。
一呼吸置いて、お湯が茶葉に浸透しはじめたら、お湯を注ぎます。
お湯は直接茶葉に当てるのでは無く、蓋碗の肌(内側の壁の部分)に当てて、茶葉に間接的にお湯が当たるようにしましょう。
こうすることにより、茶葉に水圧のストレスが掛からないため、柔らかな味わいに入ります。
お湯を注いだら、蓋碗の蓋を使って、茶葉を少しだけかき混ぜ、茶葉がまんべんなくお湯に浸かるようにして、1分弱待ちます。
最初は茶葉が浮いた状態になっていますので、蓋碗の蓋を使って除け、お茶を飲みます。
3分の1ぐらいまで飲んだら、お湯を足します。これを繰り返すことで、味がなくなるまで飲むことができます。
もし、濃すぎたらお湯を足せば良いし、薄すぎたら時間を少し待つか、茶葉を足せば大丈夫。蓋碗の蓋を少しずらして隙間から飲むと優雅に見えますよ!
安吉白茶の保存
安吉白茶は緑茶なので、フレッシュなうちに飲み切りたいお茶です。
開封したら、できるだけ早く飲み切るのが、緑茶を美味しく飲むコツです。
一度開封した袋は、できるだけ中の空気を抜いた上で、きちんと密閉し、直射日光の当たらない冷暗所に保存しましょう。
安吉白茶の鳳形のものは崩れやすい茶葉なので、袋にできるだけ余分な力が掛からないように、袋ごと缶に入れておくと安心かな。
長期保存したい場合は、封を切らない状態にして冷蔵庫や冷凍庫に入れておくと、色や味を比較的長く保つことが出来ます。
ただし、冷蔵庫や冷凍庫に入れたお茶は一度出したら、冷蔵庫・冷凍庫には戻さない方が良いです。
結露が起こって、お茶が台無しになることも多いからです。また、においの強いもののそばには置かないようにしましょう。
できるだけ1年以内に飲んでね。
安吉白茶は、色こそ淡いのですが、自然なうまみが特徴で、飲んだ後の余韻も心地よいお茶です。
じっくりと口の中に残る余韻を楽しみながら飲んでみてくださいね。