文山包種茶とはー特徴・定義・産地・製法・淹れ方・飲み方
文山包種茶(ぶんさんほうしゅちゃ)
<文山包種茶>
読み : ぶんさんほうしゅちゃ
中文 : 文山包種茶・文山包种茶 wén shān bāo zhŏng chá
茶類 : 烏龍茶(台湾烏龍茶・條型包種茶)
産地 : 台湾・新北市石碇区、坪林区 など
品種 : 青心烏龍種、大葉烏龍種、金萱種など
時期 : (春)4月上旬~5月上旬 (冬)10月~11月
茶器 : 蓋碗を推奨
台湾北部を代表する烏龍茶
台湾北部、台北近郊で生産される烏龍茶の代表格の1つが「文山包種茶(ぶんさんほうしゅちゃ)」です。
文山の名前は、昔の文山地区(日本統治時代の文山郡)に由来し、現在の地名では台北市文山区、南港区および新北市新店区、坪林区、石碇区、深坑区、汐止区など、かなり広い範囲が含まれます。
細くよじれた茶葉で、発酵程度が軽く、清らかな花の香りというのが文山包種茶の基本的な特徴です。
その特徴から「清茶」という呼び方もあります。
台湾の北部の代表的なお茶で、”北包種、南烏龍”と並べて評価されるぐらいの存在感です。
文山包種茶の定義
文山包種茶には、国家による厳密な定義はありません。
概ね、市場で広く認識されている定義は、以下の通りとなります。
・旧文山地区で生産されたお茶(現在の中心産地は坪林区、石碇区)
・條型の軽い発酵程度のお茶で、清らかな花の香りを有するもの
といったイメージです。
さまざまな品種を用いて作られるものがありますが、基本品種であり、高評価なのは青心烏龍種です。
ちょっと変わったものといえば、焙煎を施した文山包種茶もあったりします。お店によっては、奇種烏龍茶、小種烏龍茶などの名前で出ていると思います。また、20年や30年寝かせた「老茶」もごく一部で見られることがあります。普洱茶のような濃厚さを持ちつつもやさしい味わいです。新茶と全く違うので、好みは分かれると思いますが。
文山包種茶の産地
文山包種茶の原産地である旧文山地区は台湾の中央を走る中央山脈の北端です。
台北の近郊というイメージですが、自然豊かな産地が広がっています。
霧なども多く出て、お茶の生育環境としては良い場所です。そのようなこともあって、昔からこのあたりで生産されたお茶を台北に持って行き、淡水河という川のそばから船に乗せて出荷していたという歴史的な茶産地ですね。
川に港があったんですか?
日本人観光客もよく行く、乾物屋さんが並んでいる迪化街のちょっと奥のあたりだね。大稲埕(だいとうてい)という場所で、今もお茶の問屋さんが沢山残っています。
文山包種茶の製法・賞味期限
文山包種茶は、春茶と冬茶がクオリティーシーズンとされます。
文山包種茶を夏に作ってもあまり高く売れないので、基本的にはこの2シーズンですね。夏場は東方美人茶などをつくることもあります。
茶摘みは、量産用の安価なもの、あるいは天候の急変などの場合を除き、基本的には手摘みで行われます。
基本的には成熟度が高くなった、一芽二葉を摘みます。
摘んだ生葉は伝統的には日光萎凋を行っていましたが、現在は温風萎凋などの室内萎凋のみで仕上げられることが多く、水分を飛ばし、香りの発揚を促します。
做青の工程では、攪拌と静置発酵を繰り返すことで徐々に発酵を進めます。
適切な発酵程度になったら、釜炒りで殺青を行い、香りを固定します。
揉捻は、揉捻機にかけて細長くよじれた形を作って行きます。
このあと、乾燥させて荒茶が出来上がりとなります。
文山包種茶の製法は最近は温風萎凋を行うスタイルがメインになっています。日光萎凋を行わなくとも、(コンテストなどで)文山包種茶に求められている香りがこれでも十分出るということ。さらにコンテストなどで上位を狙うためには茶葉と水色の美しさ(深い緑色を保持すること)が必要であり、日光萎凋を行ってしまうと、それが実現しにくいこともあると思います。
製法も変わってきているんですね。
文山包種茶は、最近の製法のものは、フレッシュさが味わいに与える影響は大きく、緑茶と同様に早めに飲み切った方が良いお茶です。
もっとも、焙煎のしっかり効いたお茶は数年寝かせても美味しく飲めることもありますし、伝統的な製法で作られたものは「老茶」として飲まれることもあります。
保管の際には、茶葉に嵩があるので崩れやすいこと。
嵩がある分、茶葉と茶葉の間にどうしても空気が入りやすいので、封を切ったものは早めに飲むこと。
の2点を気をつけていただくと良いと思います。
文山包種茶の特徴
ここまで書いてきた文山包種茶の特徴をまとめると、
・台北の郊外にある文山地区で生産されている、條型をした軽発酵の烏龍茶。
・茶葉も茶水も緑色が強く、爽やかで花のような香りのする烏龍茶。
・主力品種は青心烏龍種だが、金萱種など他の品種から作られるものも存在し、それぞれ味、香りは異なる。
・焙煎を施したものや長期間寝かせた老茶なども存在する。
ということになります。
スッキリとした爽やかな烏龍茶で、日本人の口にも合いやすいお茶だと思います。
文山包種茶の淹れ方・飲み方
文山包種茶は香りが命の烏龍茶です。
烏龍茶なので、お湯は熱湯で、できるだけ茶器は予熱をして、熱々の状態で入れるのがオススメです。
茶器としては、
・白磁の蓋碗
が向いていると思います。
まず、蓋碗にお湯を半分ぐらい注ぎ、少し蓋碗を温めてから、お湯を捨てます。
続いて、茶葉を入れます。110cc程度の蓋碗であれば、茶葉の量は5g程度。
文山包種茶は嵩のある茶葉ですが、ガサッとした部分が蓋に触れるぐらいの量が入っていても良いぐらいです。
凍頂烏龍茶のように丸まった茶葉ではないので、お湯を注いでも、溢れるほどにはならないので大丈夫!
最初はサッとお湯を通してすぐに茶海にあけてしまい、湯通しをしておくと失敗の確率は低くなると思います。
1煎目は、沸騰したての熱湯を注ぎ、40秒程度で抽出します。
1煎目は持ち味の香りが強烈に出ると思うので、蓋碗の蓋の裏の香りなどを楽しむと良いでしょうね。
2煎目は、茶葉が開いた状態からなので、30秒ぐらいで適正な濃さのお茶になると思います(好みで増減させてください)。
3煎目以降は、徐々に味わいが薄くなっていきますので、1煎ごとに10秒程度長く待って入れるようにしていくと良いでしょう。
また、全く違う淹れ方として水出し茶も夏場には大変お薦めです。
1リットルの水と10gの茶葉を用意し、麦茶などを入れておくような保冷ポットに入れます。
そのまま冷蔵庫で一晩(8時間ぐらい)置いておくと、翌朝にはスッキリとした美味しい冷茶が出来上がります。
冷茶の場合は、渋みの成分の抽出が抑えられる反面、うまみはきちんと出るので、お湯で淹れたのとはまた違った味わいになるので、試してみてね。
文山包種茶は、清らかな香りで目覚めの一杯やスッキリとしたいときには重宝するお茶です。
夏場など暑い時期には特にお薦めです!