凍頂烏龍茶とはー特徴・定義・産地・製法・淹れ方・飲み方
凍頂烏龍茶(とうちょううーろんちゃ)
<凍頂烏龍茶>
読み : とうちょううーろんちゃ
中文 : 凍頂烏龍茶・冻顶乌龙茶 dòng dǐng wū lóng chá
茶類 : 烏龍茶(台湾烏龍茶・半球型包種茶)
産地 : 台湾・南投縣鹿谷(しかたに・ろっこく)郷
品種 : 青心烏龍種
時期 : (春)4月上旬~5月上旬 (冬)10月~11月
茶器 : 蓋碗、茶壺などを推奨
台湾を代表する烏龍茶の1つ
台湾の烏龍茶の代表格の1つが、南投縣鹿谷郷が原産の「凍頂烏龍茶(とうちょううーろんちゃ)」です。
日本で知名度のある台湾のお茶といえば、このお茶の名前が挙がるかもね。
2000年前後にテレビの某健康番組で「花粉症に効く」というような紹介のされ方をしたので、一気に広まったようです。
まあ、実際には・・・ですが。
健康茶扱いされちゃいがちだったんですけど、ちゃんと作られたお茶は味わいの深い、良いお茶ですよ。
凍頂烏龍茶の定義
凍頂烏龍茶には、厳密な国家による定義はありません。
地元の鹿谷郷農会(農協に相当)のWebサイトによると、凍頂烏龍茶は以下のように説明されています。
鹿谷茶区の青心烏龍品種より作られた半球型のお茶。製造方法の発酵程度でいえば、半球型包種茶に属する。
鹿谷郷農会のWebサイト http://www.lugufa.org.tw/tea01.htm より
この説明に従えば、原則としては、
・南投縣鹿谷郷で産するもの
・青心烏龍種
・半球型で発酵程度が軽~中程度
ということになります。
が、実際に市場を見てみると、鹿谷郷産だけではなく、近隣の名間郷産のものを凍頂烏龍茶として販売したり、青心烏龍種ではなく、金萱種や四季春種のものを凍頂烏龍茶として販売している業者などもあります。
中国のお茶の定義よりも、かなりざっくりのような・・・ 地理的表示制度のようなものは台湾にはないんですか?
台湾にも一応、茶葉産地証明標章(茶葉產地證明標章)という地域商標制度があるんだけどね。現在13種類のお茶が登録されているけど、普及度は今ひとつ。
凍頂烏龍茶は、茶葉産地証明標章では、「鹿谷凍頂烏龍茶」というブランドで登録されています。
が、その定義書の内容は、清らかタイプの凍頂烏龍茶のみを規定する内容になっています。
これは凍頂烏龍茶の伝統製法や実勢の状況とは、少し乖離を感じます。
このように台湾茶は、あまり厳密な書面による定義がされていません。
以後、台湾茶については市場での共通認識となっていることをまとめてみます。
凍頂烏龍茶に関していえば、以下の通りとなります。
・南投縣鹿谷郷周辺で生産されるお茶(必ずしも凍頂山で作ったものではない)
・基本的には青心烏龍種を用いる(他の品種を用いていることも)
・半球型で発酵程度が軽~中程度
といったイメージです。
真っ当な業者さんが扱うものであれば、基準がらずれたもの(品種が違う、産地が違う等)については、きちんとラベルや商品名に記載があると思うので、それを確認した方が良いですね。
凍頂烏龍茶と書いてあるから、なんでも凍頂山産、青心烏龍茶と思い込んではいけないということですね。
なお、凍頂烏龍茶には、大きく分けて発酵と焙煎の程度が軽いもの(清香・チンシャン)と重いもの(濃香・ノンシャン)の2タイプがあります。
冒頭の写真が濃香タイプの茶葉と茶水で、清香タイプのものは、以下のような茶葉と茶水の色になります。
茶葉の色も、お湯の色も全然違いますね。これでも同じ種類なんですね。
この違いは大まかには発酵と焙煎の程度の違いなんだよね。それぞれの生産者のお茶づくりの考え方によって、微妙にバランスが違うので、いろいろ試してみて、自分に合ったものを見つけられるといいね。
どちらの方が良いとか、高級だとかあるんですか?
これは完全に好みだね。もっとも凍頂烏龍茶の伝統的には濃香タイプの方かな。清香タイプは、高山烏龍茶などが流行してから、そちらに合わせたものというイメージ。凍頂烏龍茶の持ち味というか醍醐味を楽しむのなら、個人的には濃香タイプをお薦めします。
凍頂烏龍茶の産地
凍頂烏龍茶の原産地である鹿谷郷は台湾の中部の中心都市である台中から車で1時間ほど内陸に入ったところにあります。
三方を山に囲まれ、断層による山地と阿里山から連なる山脈、台地が交差する場所にあり、さらに川により深い谷や河岸段丘が形成されており、地形的には非常に複雑な地域です。
その中でも原産地域とされ、茶園が集中しているのは、鳳凰村、永隆村、彰雅村であり、凍頂山(標高740m)と麒麟山(標高743m)という山の周辺です。
※標高等の出所:鹿谷郷公所Webサイト https://www.lugu.gov.tw/LuguInfo/About/Environment
現在は、上記の3つの村から、鹿谷郷全体に茶園が広がっています。
鹿谷郷は山が連なる地域にあり、川などもあるので、霧などが発生しやすく、茶の栽培には適地とされています。
鹿谷は伝統ある茶産地なんだけど、最近台頭している高山烏龍茶と比較すると、標高の低さや土壌の疲労などの問題があり、正直、競争的には不利になりがちです。が、その分、この土地だからこその技術力の蓄積があるので、素材を活かすスタイルの清香タイプよりは、手間暇を掛ける濃香タイプの方が凍頂の持ち味は活きる気がします。手間暇がかかる分、決して安くはないですけどね。
凍頂烏龍茶の製法・賞味期限
凍頂烏龍茶は、春茶と冬茶がクオリティーシーズンとされます。
夏場は貴妃茶や紅茶などにすることもありますが、基本的にはこの2シーズンですね。
茶摘みは、量産用の安価なもの、あるいは天候の急変などの場合を除き、基本的には手摘みで行われます。
基本的には成熟度が高くなった、一芽二~三葉を摘みます。
生葉はまず日光萎凋(晒青)を行い、水分を飛ばし、香りの発揚を促します。
その上で、室内で静置し、緩やかに萎凋を進めます(室内萎凋)。
做青の工程では、攪拌と静置発酵を繰り返すことで徐々に発酵を進めます。
適切な発酵程度になったら、釜炒りで殺青を行い、香りを固定します。
揉捻は、茶葉を布にくるんで圧力をかけ、解して(玉解き)、また布にくるんで圧力をかける、という工程を繰り返します。
団子状にして圧力をかけることで、少しずつ丸くなる癖をつけていく。その時に摩擦熱が生じ、ここでお茶の発酵がよりしっかりとして、味わいの厚みが増していきます。最近はこの工程を省略する機械もかなり出回っていますが、ものによっては形だけ作るのみで発酵が不十分になるケースもあります。
このあと、乾燥させて荒茶が出来上がりとなります。
荒茶が完成したあと、濃香タイプの凍頂烏龍茶は焙煎を行います。
焙煎は1回で完成するわけではなく、茶葉を休ませながら、何度か繰り返し焙煎して狙いのお茶に仕上げていきます。
焙煎は電気などの焙煎もあるけれど、伝統的には炭火で焙煎をしていました。火加減の管理などが難しいので、鹿谷の周辺には焙煎だけを請け負う、焙煎師がいるくらい技術のいる作業なのよ。
賞味期限は、製法によるところが大きく、焙煎のしっかり効いたお茶は数年寝かせても美味しく飲めることがありますし、「老茶」としてこれを珍重する流れもあります。
一方、青々とした清香型の凍頂烏龍茶は、香りの低下なども考えると、できるだけ早めに飲み切った方が良いでしょう。
凍頂烏龍茶の特徴
ここまで書いてきた凍頂烏龍茶の特徴をまとめると、
・南投縣鹿谷郷が原産で、青心烏龍種を使った半球型の烏龍茶。ただし、産地と品種はそれ以外のものもあるので、表示をよく確認。
・大きく分けて、茶葉の色が緑っぽく、爽やかな清香タイプと茶葉の色が黒っぽく、深い味わいの濃香タイプがある。
ということになります。
ひとことで凍頂烏龍茶といっても、発酵と焙煎の違いによって、香りと味わいに差があるので、飲み比べて好みを見つけると良いと思います。
凍頂烏龍茶の淹れ方・飲み方
凍頂烏龍茶は香りが命の烏龍茶です。
烏龍茶なので、お湯は熱湯で、できるだけ茶器は予熱をして、熱々の状態で入れるのがオススメです。
茶器としては、
・茶壺
・蓋碗
が向いていると思います。
現地では茶壺を用いることが多いので、その淹れ方をご紹介します。
急須の大きさにもよりますが、茶葉の量は5~8g程度。
大まかな目安としては茶壺の底に丸まった茶葉が敷き詰められる程度で、茶葉が広がりきったときに茶壺の蓋に触れるぐらいが適量だと思います。
最初はサッとお湯を通してすぐに茶海にあけてしまい、湯通しをしておくと失敗の確率は低くなると思います。
1煎目は、熱湯をたっぷり注ぎ、茶壺の蓋を閉めるとちょっと溢れるぐらいが適正な湯量です。
茶壺は基本的に満水で使いましょう。空間があると湯温が下がるので、基本は満水です(茶芸的には美観などの観点でそこまで注がないケースもあります)。
凍頂烏龍茶のようにきつく丸まっている茶葉は、解けるまで時間がかかります。
概ね1分ぐらい待ち、1煎目を茶海にあけます。茶壺の中には、お湯を残さないよう、しっかりと最後の一滴まで出し切りましょう。
お湯が少し残っていると、渋みが出てしまうので、必ず出し切ろう!
2煎目は、茶葉が開いた状態からなので、30秒ぐらいで適正な濃さのお茶になると思います(好みで増減させてください)。
3煎目以降は、徐々に味わいが薄くなっていきますので、1煎ごとに10秒程度長く待って入れるようにしていくと良いでしょう。
凍頂烏龍茶は、知名度があるがゆえに入門編のお茶だと感じられるかもしれませんが、ある程度、お茶を飲んだ人が戻ってくる玄人向けの側面もあります。
ぜひ様々な作り手のお茶を飲み、好みのお茶を探してみてください!