龍井茶とはー特徴・定義・産地・製法・淹れ方・飲み方
龍井茶(ロンジンちゃ)
<龍井茶>
読み : ロンジンちゃ・りゅうせいちゃ
中文 : 龙井茶 Lóng jĭng chá
茶類 : 緑茶(炒青緑茶)
産地 : 浙江省の一部地域 ※地理的表示産品
品種 : 龍井群体種、龍井43、龍井長葉、迎霜、鳩坑種、烏牛早、中茶108など
時期 : 3月上旬~4月中旬
茶器 : グラス、蓋碗などを推奨
中国緑茶の代表格
中国緑茶の代表格として名前を挙げられることが多いお茶が、浙江省が原産の「龍井茶(ロンジン茶)」です。
ブランド力がある理由はいくつかあるけど、長らく中国の国礼茶(国賓など国の儀礼としてプレゼントに使われるお茶)であることや、中国の国会にあたる人民大会堂で飲まれていたお茶だという政治的理由が大きいかもね。
確かに龍井茶という名前は聞いたことがありますね。
龍井茶の定義
龍井茶は、中国の地理的表示(GI)産品として登録されています。
その定義書による、製品の定義は以下の通りです。
地理的表示製品保護範囲内(後述)で摘みとられ、茶樹品種の必要条件に適合した茶樹の生葉を、伝統技術に則って、地理的表示製品保護範囲内で加工・製造したもので、“色緑、香郁、味醇、形美”の特徴を有した扁形の緑茶。
国家標準『地理的表示製品 龍井茶』 GB/T 18650-2008 より
茶樹品種については、「龍井群体種(ぐんたいしゅ・在来種のこと)、龍井43、龍井長葉、迎霜、鳩坑種など、龍井茶に適した品種」となっています。
産地によっては、より芽吹きの早い品種である、烏牛早(うぎゅうそう)などを用いることで、3月上旬から摘み始めている地域もあります。
産地と品種はある程度決まっていて、形は扁形ということで、平べったい形状をしています。あとは特徴である”色緑、香郁、味醇、形美”という部分だね。だいたいの意味は、”色が緑色で、香りが馥郁としていて、味わいには厚みがあり、形が美しい”というもの。龍井茶の特徴は、4つの素晴らしい特徴があるということで「四絶(しぜつ)」と言ったりするね。
平べったくて、四絶の特徴があり、産地や品種を守っているお茶ということですね。
龍井茶の産地
龍井茶は地理的表示産品であるため、原産地の保護区域がきちんと定められています。
原産地域は3つに分かれており、2008年の基準策定時の行政区域名で示すと、以下の通りです。
西湖(せいこ)産区 → 西湖龍井茶 |
浙江省杭州市西湖区 ※西湖龍井茶については、後日、別記事でもう少し詳しくご紹介します。 |
銭塘(せんとう)産区 → 銭塘龍井茶 |
杭州市䔥山区、濱江区、余杭区、富陽区、臨安区、桐廬県、建徳市、淳安県 |
越州(えっしゅう)産区 → 越州龍井茶 |
紹興市紹興県(現在の越城区・柯橋区)、越城区、新昌県、嵊州市、諸曁市および上虞区、金華市磐安県および東陽市、台州市天台県の一部地域 |
それぞれの産地で生産される龍井茶は、原則、西湖龍井茶、銭塘龍井茶、越州龍井茶というブランド名で流通されます。
が、より細かな産地名である、富陽(ふよう)龍井茶、新昌(しんしょう)龍井茶(新昌県は大佛で有名なため”大佛(だいぶつ)龍井茶”とも)などの名称で流通していることもあります。
元々の原産地は杭州市西湖区なので、西湖龍井茶がもっとも知名度は高いです。以前は浙江省全域で作っているのを浙江(せっこう)龍井と呼んでいたりもしたんだけれど、地理的表示が固まってからは、この3地域の区分けになっているね。
一番美味しいのはどこですか?
うーん、それは答えにくい質問。どこも美味しいお茶はあるし、どこもダメなお茶はあるから。ただ、市場での値段としては、西湖龍井茶が圧倒的に高いかな。産地が狭く生産量が限られているので、ブランドプレミアムが付いてます。たとえば、清明節より前のお茶(明前茶)だとしたら、産地で買っても1斤1000元(500gで15,000円)以下では買えないね。一番摘みだと、1斤1万元(500gで150,000円)。
あわわ・・・
西湖龍井茶はたとえると南魚沼産コシヒカリ、みたいなものだからね。龍井茶は新潟産コシヒカリ、ぐらいのイメージかな。ワインとかと一緒で、エリアを限定していけばして行くほどお値段は高くなるね。でも、そこまで突き詰めなくても十分美味しいお茶はありますよ。
何で龍井茶はそんなに高いんですかね?
ものすごく小さな芽を手摘みで摘むからだね。こんなのを果てしなく摘むから。
この葉っぱがお茶になると、5分の1ぐらいの重さになっちゃうからね。茶摘みさんも内陸の方から出稼ぎに来てもらったりするので、めちゃめちゃコスト高なんです。安いものも勿論あるんだけど、それは茶葉が大ぶりで渋みも出やすいので、龍井茶の品の良さみたいな部分は楽しめないと思います。
ひゃー、これは仕方ないですね。もし買ったら、大事に飲みます・・・。
緑茶は見た目がお値段に繋がりやすいので、とても綺麗なお茶を見たら、良いお値段のお茶だと思った方がいいかもね。
日本での市場価格などは、こちらで見てみてくださいね(参考価格です)。
龍井茶の製法
龍井茶は、釜炒りで殺青(さっせい)し、釜炒りで乾燥させる、炒青(しょうせい)緑茶と呼ばれるタイプの緑茶です。
最初に攤放(たんほう)といって、冷暗所で茶葉を数時間置いてから、青鍋(あおなべ)という工程に入ります。これがいわゆる殺青工程で、高温で酵素を破壊します。その後、少し冷まして葉っぱの中の水分を均等に戻し(回潮・かいちょうと言います)、少し温度を低くした釜の中に入れます。
おお、もう一度、釜の中に入れるんですね。
その中で、釜の底の方に茶葉を押しつけたりして、平べったい形に成形しながら、乾燥を進めて行きます。後半には、茶葉に付いている産毛を上手く取るようにして、龍井茶の特徴である、平べったくて表面はつるつるになっている”扁平光滑(へんぺいこうかつ)”という状態に仕上げます。
釜の中で仕上げちゃうんですね。だから、炒青緑茶、と。
そうそう。火に当たり続けることになるので、少し香ばしい、青豆とかきな粉、あるいは栗のような香りと喩えられる香ばしいお茶になることが多いね。
その後、龍井茶は伝統的には生石灰の入った缶の中に入れて、1週間ほど置いておくの。こうすることにより、味わいがまろやかになるのよ。
龍井茶の特徴
ここまで書いてきた龍井茶の特徴をまとめると、
・平べったい形をし、産毛が取り除かれている(扁平光滑)
・釜炒りで乾燥させているので香ばしい
・青豆やきな粉、栗のような香り(火入れの具合や産地の違いで特徴は異なる)
ということになります。
中国緑茶はいろんなタイプがあるんだけど、日本人の口に合いやすいお茶のような気がします。淹れ方も簡単なので、ぜひ挑戦してみて欲しいお茶です。
龍井茶の淹れ方・飲み方
龍井茶、特に早い時期に摘まれたお茶は、とてもかわいらしい新芽が綺麗な形で戻り、目でも楽しめるお茶です。
そうした姿を愛でられるよう、
・ガラスの器(グラス、ピッチャー)
・白磁の蓋碗
などを使うと、より映えるのではないかと思います。
グラスの場合は、耐熱ガラスを推奨します。
茶葉をグラスの底がうっすら隠れるぐらい(グラスの大きさにもよりますが1~2g程度)に入れ、お湯(80~90℃)を茶葉がひたひたになる程度にほんの少し注ぎます。
お湯を吸った茶葉から、お茶の香りがふわっと立ちのぼりますので、その香りを少し楽しみながら、グラスを少し傾けたり回したりしながら、茶葉とお湯を馴染ませます。
その後で、お湯をグラスに8分目ぐらいまで注ぎます。
お湯を注ぐと、茶葉が浮いた状態になっていると思います。
最初は少し息をフーフー吹きかけながら、茶葉を除け、少しずつ飲んでいきます。
お湯が半分ぐらいまで減ってきたら、差し湯をします。
以後、だいたい、グラスの3分の1ぐらいまで飲んだら差し湯をしていくようにすれば、味がなくなるまで飲むことができます。
本当にグラスとお湯だけで飲めちゃうんですね。
そう。これでいいの。もし、濃すぎたらお湯を足せば良いし、薄すぎたら時間を少し待つか、茶葉を足せば良いですよ。そのぐらいアバウトでも全然大丈夫です。
蓋碗を使うときは、蓋で茶葉を除けることが出来るから、もう少し飲みやすいかもね。
龍井茶の保存
龍井茶は緑茶なので、フレッシュなうちに飲み切りたいお茶です。
開封したら、できるだけ早く飲み切るのが、緑茶を美味しく飲むコツです。
一度開封した袋は、できるだけ中の空気を抜いた上で、きちんと密閉し、直射日光の当たらない冷暗所に保存しましょう。
長期保存したい場合は、封を切らない状態にして冷蔵庫や冷凍庫に入れておくと、色や味を比較的長く保つことが出来ます。
ただし、冷蔵庫や冷凍庫に入れたお茶は一度出したら、冷蔵庫・冷凍庫には戻さない方が良いです。
結露が起こって、お茶が台無しになることも多いからです。また、においの強いもののそばには置かないようにしましょう。
冷蔵庫や冷凍庫は長期保存用で、封を切ったものは入れない方が良いです。出し入れをすると結露で急速に茶葉が劣化します。
賞味期限はどのくらいですかね?
緑茶なので、常温で冷暗所に置くのであれば、未開封でだいたい1年ぐらいかな。開封済みのものは、もう出来るだけ早く飲み切った方が美味しいです。空気と触れるとどんどん香りや味が落ちるし、色も変わっていくので。量が沢山ある場合は、何回かで飲みきれるぐらいの小分けにして、冷蔵庫や冷凍庫に入れておくと良いかもね。
春に買って、夏が終わるまでに飲み切るぐらいがちょうど良いかもね。
ちょっとお値段の張るお茶もあるのですが、龍井茶、是非お試しください!