普洱茶(プーアル茶)とはー特徴・定義・産地・製法・淹れ方・飲み方

普洱茶(プーアルちゃ)

<普洱茶>
読み : プーアルちゃ・ふじちゃ
中文 : 普洱茶 pŭ ĕr chá
茶類 : 黒茶(雲南黒茶)
産地 : 雲南省の一部地域 ※地理的表示産品
品種 : 雲南大葉種
時期 : (春)2月下旬~5月上旬 (秋)8月中旬~9月
茶器 : 蓋碗、茶壺などを推奨

 

献上茶の歴史も持つ、黒茶ブームの火付け役

日本でもペットボトル飲料などで知られているプーアル茶。
ややもすると「健康茶」のように捉えられがちなのですが、中国ではかなりディープで熱狂的なマニア・コレクターもいるお茶です。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

普洱茶は広東省や香港などでは昔から愛好者が多かったお茶です。特に黒茶の特徴として語られることの多い”寝かせれば寝かせるほど良くなる”という特徴があるためか、年月を経たビンテージものなどが高額で取引されたり、飲むばかりではなく一種の骨董品のような価値を見出す人もいました。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/wakaba.png
わかば

骨董品、ですか?

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

日本だとどうしても緑茶が中心なので、新茶が一番!というイメージなんだけれども、昔ながらの普洱茶は、その逆で。新茶の時は渋みが強くてなかなか飲みづらく、それが20年、30年と寝かせておくと、とてもまろやかな味わいになるんだよね。良い茶葉であれば、年月を経たものの方が価値が高い。そんなことから香港などでは普洱茶を投資も兼ねて買い集めるコレクターがいた。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/wakaba.png
わかば

お茶のイメージがまるで違いますね。寝かせておくと美味しくなって、値段が上がっていくなんて・・・

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

ところが香港返還の時に、一部の投資家が手放したお茶が台湾に流れた。当時、台湾では普洱茶ブームが巻き起こって、普洱茶に投資する人も増えたんだね。美味しさよりは投資品として。それで大分、質の良いお茶が台湾に入るようになって、美味しさに目覚めた人もいたみたい。

普洱茶は台湾でも人気に

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/wakaba.png
わかば

ふむふむ。香港返還が1997年でしたよね?

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

そう。その前後に台湾に流れはじめたんだけど、今度は経済力をつけてきた中国に戻っていったという流れかな。元々、中国では黒茶は辺境の少数民族に売られる安いお茶というイメージがあったんだけど、台湾のブームが逆輸入される形で、普洱茶には人気が集まった。普洱茶は清の時代には献上茶になっていた歴史があるので、そのあたりが他の黒茶とはちょっと一線を画したんだと思う。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/wakaba.png
わかば

なるほど。献上茶の歴史があるといわれると、高級茶な感じがしますね。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

それで中国国内で、普洱茶を買いさえすれば儲かる!的な勢いで普洱茶ブームが巻き起こったんだよね。普洱茶と名の付くものであれば、何でも売れちゃった時代が。2000年前後に中国の茶業の民営化があったことも大きくて、雨後のタケノコのように沢山の民間工場が出来た。そのピークが2006年。でも、そこで一度、相場が崩壊した。普洱茶の品質や知識が不十分な人が参入してくる一方、高値で売り抜けを狙う人たちが出たことが大きいかな、と。そこで普洱茶は一時、需要が冷え込むんだよね。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/wakaba.png
わかば

ありゃりゃ、バブル崩壊、ですか・・・

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

・・・というところで、日本の人の知識が止まってたりするんだけど。今は違う流れが来ている。投資目的が主だったとはいえ、ブームを通じて、普洱茶の美味しさだったり、本当の価値みたいなところに気づく人も結構いたんだよね。その人たちは普洱茶の中でも、”価値の上がるお茶”と”そうでないお茶”があるということに気づいた。結果、”価値の上がるお茶”に関しては、値段はずっと最高値を更新している。一方、そうでないお茶は、いわゆる量産品なんだけど、雲南省政府が茶業を強力に推進した結果、生産量が激増して、相場はかなり軟調だね。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/wakaba.png
わかば

普洱茶の中でも、上手く行っているのとそうでないものがあるんですね。

 

普洱茶の定義

普洱茶も、中国の地理的表示(GI)産品として登録されています。
その定義書による、製品の定義は以下の通りです。

地理的表示保護範囲内(後述)の雲南大葉種晒青茶を原料とし、かつ地理的表示保護範囲内で特定の加工技術を採用して製造されたもので、独特の品質特性を有する茶葉。その加工技術および品質特性により、普洱茶は普洱茶(生茶)と普洱茶(熟茶)の2種類の類型に分けられる。

国家標準『地理的表示製品 普洱茶』 GB/T 22111-2008 より

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

いくつかポイントがあって、まず雲南大葉種という品種を用いることになっています。これも定義書には「雲南省茶区に分布する各種の喬木型、小喬木型の大葉種茶樹品種の総称」と定義されていて、ざっくりといえば雲南省の大葉種(アッサム種)から作るのが条件の1つめ。もう1つは、次の「晒青茶(さいせいちゃ)」で、これは緑茶のところで紹介した「晒青緑茶」のことだね。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/wakaba.png
わかば

雲南大葉種の晒青緑茶が最初の原料でなければダメということですね。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

そうだね。雲南大葉種はポリフェノールの含有量が相対的に多いので、定義書では茶ポリフェノールの含有量についても規定をしているので、それ以外の産地の品種だと、そこで引っかかるね。

もう1つ、大事なのが普洱茶には2種類のタイプがあるということです。
それが、「生茶(なまちゃ)」と「熟茶(じゅくちゃ)」です。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

生茶と熟茶の違いは淹れてみると一目瞭然だね。

普洱生茶(左)と普洱熟茶(右)

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/wakaba.png
わかば

色が全然違いますね。本当に同じ普洱茶なんですか?

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

この2つは製造工程に違いがあるね。生茶は「渥堆(あくたい)」という工程を経ずに出荷されたもの。熟茶は「渥堆(あくたい)」を行ってから出荷したものだね。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/wakaba.png
わかば

ん、この前、黒茶は渥堆があるお茶と勉強したような気が。そうなると、普洱生茶は黒茶じゃないのでは?

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

す、鋭い質問をしてくるね。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/fumao.jpg
フーマオ

(動揺しているな)

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

実は、普洱茶の定義書には「後発酵(あとはっこう)」という言葉も定義されていて。そこにはこう書いてあります。

4.3 後発酵 post-fermentation

雲南大葉種晒青茶あるいは普洱茶(生茶)を特定の環境条件下で、微生物、酵素、湿熱、酸化などの総合作用を経て、その内含物質に一連の転化を生じさせることで、普洱茶(熟茶)の独特の品質特性を形成する過程。

国家標準『地理的表示製品 普洱茶』 GB/T 22111-2008 より

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

ざっくりと言うと、この「後発酵」の工程が始まったとみなされれば、そのお茶は渥堆と同じことをやったことになるよね、ということだね。そのポイントになるのが、お茶を固める「緊圧(きんあつ)」の工程で、これをしたら緑茶から黒茶になるということ。

このような少し例外的な定義があるため、普洱茶の製品の種類としては、以下の3種類があると定義書に定められています。

・普洱茶(生茶)緊圧茶
・普洱茶(熟茶)散茶
・普洱茶(熟茶)緊圧茶

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/wakaba.png
わかば

ん、普洱茶(生茶)の散茶ってのは無いんですか?

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

さっき説明した通りで、渥堆をしているか、後発酵工程をはじめる、すなわち緊圧するかしないと、普洱茶ではない、ということだね。渥堆もしていないし、後発酵の工程も始まってないなら、国の基準では、それは緑茶。ただの晒青緑茶で普洱茶じゃないよ、ということだね。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/kaori.png
かおり

普洱茶が緑茶か黒茶かハッキリしなかった・・・という人は、これでスッキリするかもね。

 

普洱茶の産地

普洱茶は地理的表示産品であるため、原産地の保護区域がきちんと定められています。
定義書が制定された2008年時点の行政区域で行くと、

雲南省普洱市、西双版納州、臨滄市、昆明市、大理州、保山市、徳宏州、楚雄州、紅河州、玉渓市、文山州などの11の州(市)、75の県(市、区)、639の郷(鎮、街道事務所)が管轄する行政地域。

となっています。
雲南省の面積は39.4万㎢と、日本(37.8万㎢)とほぼ同じくらいの面積です。
その中でこのプーアル茶の生産地域に指定されている範囲はかなり広く、それぞれの地域で植生が違いますし、お茶の品種にも違いがあります。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

普洱茶は雲南大葉種で作るとなっていますが、実は雲南大葉種の中でも、品種にはさまざまなバリエーションがあり、地域によって品種が違うことがあります。最近開発された農園型の茶園のお茶(「台地茶・だいちちゃ」といいます)は多くは雲抗10号という特定品種ですが、古くからの在来種の木から作るお茶(「古樹茶・こじゅちゃ」といいます)の場合は、地域ごとの品種の違いが色濃く出ます。

※雲南大葉種を細分化した品種(有性系品種)としては、勐庫大葉種、鳳慶大葉種、勐海大葉種などがあります。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/kaori.png
かおり

ということは、その「古樹茶」というタイプのお茶は、産地によって味わいがかなり違うということですかね?

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

そうそう。もちろん産地の環境の違いというのもあるんだけど、品種の違いは大きいね。新しいお茶の段階でも口当たりがマイルドなものもあれば、最初は渋くて飲むのがきついものがあったり、雲南大葉種とひとことにまとめているけど、実は地域差は結構大きいよ。台地茶の場合は、大体品種が一緒なので、産地間の差はさほど大きくないんだけどね。

普洱茶の愛好家の間では、産地は大変重要な情報になってきます。
昔から名産地とされる場所は「六大茶山(ろくだいちゃざん)」と呼ばれており、以下の通りとなります。

瀾滄江外六大茶山(古六大茶山)
 革登、倚邦、莽枝、蛮、曼撒(易武)、攸()

瀾滄江内六大茶山(新六大茶山)
 南糯、南嶠、勐宋、景邁布朗、巴

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

このへんの話をし出すと普洱茶は全然終わらなくなるので、今日のところはこのへんの地名が有名で、よく出てくるぐらいのイメージで捉えてもらえればいいかな。ただ、この地名だけに踊らされてもダメで。この地名が指す範囲は結構広くて、品質が良いものもあれば、そうでないものもあるし、なにより有名だけに紛い物も多いので。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/fumao.jpg
フーマオ

名前だけで選んじゃダメよ!

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/wakaba.png
わかば

うーん、普洱茶、奥が深そう!

 

普洱茶の製法

普洱茶は、生茶と熟茶で製法が違うのですが、いずれもベースになるのは晒青緑茶を作ることです。

普洱茶の茶摘みは、基本的にはある程度成熟した茶葉を摘みます。
ただし、金芽(全て芽)、宮廷(芽が中心)という特殊なグレードがあり、これらのお茶は、芽だけを摘んだりします。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

芽を使うとうまみは強く、柔らかい口当たりのお茶にはなるのですが、香りなどは今ひとつになります。芽だけを摘むので茶摘みコストは高くつくのと、見映えが良いので高値になりがちです。が、この手のお茶はたいてい台地茶(木によじ登って芽だけを摘むのはかなり難しい)であるので、味わいの余韻はあまり無いことが多いです。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/wakaba.png
わかば

宮廷というので、昔の宮廷に献上したお茶のような高級茶という意味かと思っていました。。。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

麗しい誤解というやつだね。まあ、名前だけでイメージするとそうなるかもね。

茶摘みしたあと、攤放(たんほう)を行ってから釜で炒って殺青します。
伝統的な製法では、殺青したのちに揉捻をおこない、天日に干して乾燥し、晒青緑茶が出来上がります。

晒青緑茶を蒸気で蒸し、緊圧すると普洱生茶となります。
形状でよく見かけるのは、上から重石を乗せて丸い円盤形にした「餅茶(もちちゃ/へいちゃ/ピンちゃ)」です。
このほか色々な形に固められることがあり、お碗をひっくり返したような形の「沱茶(だちゃ)」、心臓の形(といいつうキノコのような形)の「緊茶(きんちゃ)」、レンガのような長方形の「磚茶(せんちゃ)」、正方形をした「方茶(ほうちゃ)」などがあります。

普洱餅茶

 

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

普洱生茶は、お茶の成分がまだ変化しないままに残っているので、寝かせれば寝かせるほど美味しくなる余地が大きいお茶ということになります。そんなわけで、投資して価値があるとされるのは、この手の生茶のタイプであることが多いです。ただし、最近は茶葉の品質にこだわる面が非常に大きくなっていて、原料茶の良し悪しが大変重要になってきています。古樹茶であったり、肥料や農薬を一切かけない「荒山茶」など、特別な栽培方法の原材料のものに人気が集中する傾向があります。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/wakaba.png
わかば

なるほど。普洱茶バブルが一度弾けてからは、素質が慎重に吟味されるようになったんですね。プロスポーツの世界みたい・・・

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

プロスポーツというのは言い得て妙だね。プロスポーツさながらに、お茶の原料となる生葉も人気の産地のものは高値で取引されるようになっています。たとえば、超有名産地である「老班章(ろうはんしょう)」の2019年の生葉の買い取り価格は1kgで1万元(約15万円)だった。1斤(500g)の製品茶を作るには大体2.5kgの生葉が必要だから、500gの生葉だけの原価は2.5万元(約37万円)ってところかな。これに加えて、製茶の工賃が加わるから・・・

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/wakaba.png
わかば

怖すぎますね。そんな世界があるなんて・・・

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

まあ、ハイエンドの普洱茶の世界はこんな感じだね。しかも、相場が崩れないことが前提だけれども、この値段が1年寝かせるごとに値上がりしていくわけで、20年ものとかになったときに、どのくらいの価格になることやら・・・

もちろん、これは極端な例です。
一般的に入手しやすい台地茶の普洱生茶は手頃な値段で購入でき、このお茶でも、味わいの変化を楽しむことが出来ます。
ただし、メーカーによりお茶の作り方などに個性がありますので、出来れば試飲してから購入するのがベストです。

一方、熟茶の方は比較的、リーズナブルなお値段になることが多いです。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

生茶は”すぐに飲む”というよりは、”あとで飲む”ために買うお茶なんだけど、熟茶はすぐに飲み頃の状態にして販売されるお茶です。

熟茶は、原料となる晒青緑茶を堆積して水分を与え、空気中の微生物や水分、温度によって、ポリフェノールを変化させる渥堆工程を経るお茶です。
渥堆を行う際は、温度管理が非常に重要になり、茶葉の温度が65℃より高くなりすぎるとお茶が焼け焦げてしまいます。
こうなると、お茶を淹れたときに茶葉が開かなくなり、美味しいお茶にはなりません。
また、温度コントロールが不適切だと、雑菌などが混入し、カビ臭さや雑味の原因になります。

渥堆後に乾燥を行い、出荷されますが、渥堆発酵を経たお茶の成分が安定するまでには少し時間がかかります。
そのため、購入したばかりのお茶よりも、少し時間が経ったものの方が美味しく感じられることもあります。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

熟茶の場合は、渥堆で多くの成分が変化済みの状態で出荷されるので、生茶ほど変化の余地は大きくないね。なので、古くても価値が上がるかというと、ちょっと難しい。よほど稀少なお茶だったりしたら別だろうけどね。

熟茶も、生茶同様に緊圧して出荷されることがあります。
熟茶に比較的多いのですが、とくに細かな茶葉を用いて、小さなお碗型の「小沱茶(しょうだちゃ)」を作ることもあります。
少し大きめの茶器なら、1回分の量としてちょうど良い量なので、持ち運びなどに便利です。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

伝統的な製法はこの通りなんだけど、最近は普洱生茶に少し異なる製法が出てきています。揉捻を行った後に「渥黄(あくおう)」あるいは「燜堆(もんたい)渥黄」という工程を経ることが増えてきました。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/wakaba.png
わかば

ん、それは何ですか?

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

雲南大葉種はポリフェノールの含有量が多い、すなわち渋みが強いお茶なんだね。この渋み成分が長年をかけて変化していくと、渋みが和らぎ、甘みや香りの成分が育っていく。これが生茶。熟茶は渥堆でその渋みの成分を急速に変化させて、渋みを和らげすぐに飲み頃のお茶にしているわけだ。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/wakaba.png
わかば

はい。そうでしたね。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

で、問題なのは渥堆をせず、緊圧をしない普洱生茶。本来は渋くても仕方が無いお茶なんだけれども、最近は新茶でも渋みが抑えられて、美味しく飲めるようなお茶が増えてきているんだ。それを実現しているのが、先程挙げた「渥黄」という工程なんだ。黄茶の「悶黄」に似た手法なんだけど、手順としては、晒青緑茶を作るとき、揉捻を行った後、茶葉を積み重ねて少し置いておく。そうすると、少し渋み成分が壊れて、味がまろやかになるし香りも少し変化する。そのあとで、乾燥して出荷するから、生茶でありながら、いきなり飲んでも渋みがそこまで気にならないお茶になる。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/wakaba.png
わかば

そういう方法があるんですね。それは最近ですか?

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

そう、新製法。だから、昔の渋い普洱生茶のイメージで、現在の普洱生茶を飲むと、ちょっと驚く人も多いかな。とはいえ、デメリットも当然あるはずで、本来長い時間をかけて変化を促すはずだったお茶を、少し成分を変化させてから出荷するわけだから、その後の変化は多分昔の生茶とは違うものになるはず。ただ、それは今のところ、まだそこまでの年月になったお茶が無いから、正確には分からないけどね。昔のお茶とは違う変化になるかもしれない。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/wakaba.png
わかば

普洱茶も、色々変化しているんですね。これは大変だ。

 

普洱茶の特徴

ここまで書いてきた普洱茶の特徴をまとめると、

・普洱茶には生茶と熟茶の2種類があり、品質は大分違う。
・生茶は緑茶同様にポリフェノールが多めの少し渋みを残したお茶だが、年月が経つにつれて味わいがまろやかになっていく成長するお茶である。
・熟茶は渥堆発酵を通じて、ポリフェノールの多くを転化させており、最初から渋みが少なく、まろやかなお茶になっている。ただし、経年での変化余地は少ない。
・最近は、生茶の製法が少し変わってきており、渋みを抑えた新タイプのお茶も出回っている。

ということになります。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

普洱茶は置くが深い世界なのですが、まずはこのくらい覚えておけば大丈夫だと思います。

 

普洱茶の淹れ方・飲み方

普洱茶は、雲南大葉種ならではの厚みのある味わいを煎を重ねて楽しみたいお茶です。
成分を十分に引き出す上では、湯温が高いことときちんとお湯を出し切れることが重要になりますので、

・茶壺
・白磁の蓋碗

などを使うと、より美味しく淹れられるのではないかと思います。

普洱茶をはじめとした黒茶の場合、淹れる際に気をつけた方が良いことがあります。
それは、かならず一度、茶葉に一度お湯を注いで、それをすぐに捨ててしまうという「温潤泡(おんじゅんほう)」を行うことです。
温潤法は一般的には「洗茶」として知られることが多いのですが、目的は茶葉の準備運動です。
黒茶の多くは、寝かせているお茶が多く、特に緊圧したお茶の場合は、味の抽出まで少し時間がかかることがあります。
そのため、お湯を一度通して、茶葉の中心部に水分を染みこませやすくするものです。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/fumao.jpg
フーマオ

一度、熱湯を通しておけば、器も温まって、美味しいお茶を淹れやすくなるよ!

普洱茶は、元々が渋みを持っている茶葉であることが多いため、茶葉量は少し多めにし、できるだけ素早く抽出した方が失敗は少ないと思います。
110cc程度の蓋碗であれば、茶葉を5gぐらい入れ、最初のうちは10~20秒以内でサッと淹れ、煎を重ねて行くと良いでしょう。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

緊圧したお茶を崩した茶葉を使う場合は、粉末の量にも注意です。粉末は味が出やすいのですが、雑味も非常に出やすいので、粉末の多いお茶を使う場合は、最初のうちは10秒以内ですぐに抽出するなど、できるだけ浸出時間を短く取り、茶漉しなども併用すると美味しく入ると思います。

茶葉量を多めに使うと勿体ないようにも感じますが、普洱茶は非常に煎が効くものが多く、1リットルは軽く飲めるお茶が多いと思います。
一度に量を飲めない場合は、一旦抽出だけしておき、常温程度にして飲んだり、冷蔵庫で冷やして飲むのもお薦めです。
黒茶は熱いうちには独特の香りがありますが、冷やすと香りがマイルドになるので、飲みやすいお茶になります。

 

普洱茶の保存

普洱茶は、一部の生茶を除き、保存しやすいタイプのお茶です。
基本的には、直射日光を避け、風通しが良く、結露などがない場所(窓のそばなどは避ける)で、においの強いものが近くに無いところに常温で置いておけば問題ありません。

例外となるのは、フレッシュな若い生茶のうち、烏龍茶のように香りを楽しみたいタイプの生茶です。
この手のお茶は、空気に触れて成分が変化すると、香りなどが飛んでしまうことがあります。
普洱茶本来の熟成としては、これは正常なことですが、もし香りに魅力を感じているのであれば、密封して烏龍茶と同じように早めに飲み切った方が良いと思います。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/arukichi.gif
あるきち

普洱茶は基本的に放置しておいて、味が変わっていたら、それも変化だ、と感じて飲むものなので、わりと無造作に積んで置いて大丈夫だと思います。本格的に熟成しようと思えば、温度や湿度などによって成分の変化スピードは変わるので、その点を研究された方が良いと思います。

https://teamedia.jp/wp-content/uploads/2020/03/kaori.png
かおり

それでも冷蔵庫や冷凍庫に入れる必要は無いので、安心してね。

 

普洱茶は高級なものだけでなく、手頃で美味しいものも沢山あります。
ただ、丁寧に作られたものの方がくせや雑味が少ないので、まずは小分けパックなどで少量を試してみて、気に入った銘柄を餅などの固形茶の形で購入し、崩しながら飲んでいくと良いでしょう。
慣れてきたら、本当に気に入ったものは、数枚を大人買いして、経年変化を楽しむのも良いと思います。

 

関連記事