霍山黄芽とはー特徴・定義・産地・製法・淹れ方・飲み方

霍山黄芽(かくざんこうが)

<霍山黄芽>
読み : かくざんこうが
中文 : 霍山黄芽 huò shān huáng yá
茶類 : 黄茶(黄小茶)
産地 : 安徽省六安市霍山県 ※地理的表示産品
品種 : 霍山金鶏種、舒茶早など
時期 : 4月上旬~5月上旬
茶器 : 蓋碗、グラスを推奨

 

安徽省の黄茶の代表格

安徽省六安市にある霍山県は、周囲を大小の山に囲まれた地域で、前漢の時代から茶を栽培しはじめ、明の時代には献上茶を出した茶産地です。
霍山黄芽は、そんな霍山県で産する黄茶の高級茶であり、北京オリンピックの時に北京の老舎茶館が売り出した「五輪茶」の黄茶部分を担当したお茶です。

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あるきち

あまり日本では知名度が無いんですけど、霍山県は他にも霍山黄大茶という番茶のような黄茶も作っています。こちらは柔らかい芽と葉で作る高級茶のイメージだね。

緑茶のフレッシュさをある程度残しつつ、刺激性を落として、うまみと味わいを感じやすいお茶です。
悶黄が上手に行っていないと、少し籠もった香りを感じることがありますが、適度な悶黄を行ったものは、むしろ良い香りがします。

 

霍山黄芽の定義

霍山黄芽は、中国の地理的表示(GI)産品として登録されています。
その定義書による、製品の定義は以下の通りです。

霍山県内の茶区で産出され、特殊な技法によって精製された茶葉。

安徽省地方標準『地理的表示製品 霍山黄芽』 DB34/T 319-2012 より

茶樹品種については、地元の品種である金鶏種が主に用いられています。

 

霍山黄芽の産地

霍山黄芽は霍山県全体が原産地保護範囲に指定されていますが、その中でも特に名産地とされるのが、「三金一烏」と呼ばれる地域です。
これは、金鶏山、金家湾、金竹坪、烏米尖の4カ所を指す言葉で、特に標高の高い金鶏山はもっとも有名な場所です。
定義書でも、特一級はこれらの特定の産地産に限るとされています。

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あるきち

霍山県は北緯31度ほどで、これ以上、北に行くと寒すぎて、南だとお茶の成長速度が早くなりすぎる、という点で位置的に恵まれていること。また、山に囲まれた地域で霧が多いし、水源も多いので湿度も高めなど、お茶に適した生育条件が揃っています。

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わかば

産地の環境も恵まれているんですね。

 

霍山黄芽の製法

霍山黄芽の茶摘みは山地では比較的遅く、一般的には穀雨の前後になります。
標高の低い地域では清明節前後から始まります。

茶摘みは一芽一葉~一芽三葉で摘みます。
黄芽という名前に反して葉っぱが含まれるお茶なので、分類としては黄小茶となります。
そのあとで、攤放(たんほう)を行って、水分を少し飛ばし、青みを抜きます。

殺青は釜炒りで行いますが、霍山黄芽の伝統製法には独特の釜炒りスタイルがあります。
一つは、高温と低温の2つの釜を用意すること。
もう一つは、手で直接炒るのではなく、小さな竹箒のような道具を使って釜炒りをすることです。

まず、高温の釜に入れて殺青します。
高級茶の場合は1回の釜に入れる量は1両(50g)前後で、殺青のムラが出ないよう少量で慎重に進めます。
小さな竹箒を釜の中で三角形に動かして、殺青をして行きます。
そのあと、低温の釜に移し替えて、形を整えていきます。

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あるきち

手を使わずに竹箒のようなものを使うのは、茶葉が繊細なので、それを壊さないようにするためだとか。上質な霍山黄芽をお皿に空けると、お皿に沢山の産毛が付いたりするので、やさしく取り扱われているのが分かるね。

殺青と成型ができたら、以後、3回に分け、炭火の輻射熱を用いて茶葉を乾燥させていきます。
最初の乾燥は「初烘(あるいは毛烘)」といい、2回目を「復烘」、3回目を「小烘」といいます。
そして、この乾燥を行っている間に、黄茶の独特の品質を作る「悶黄」を行っていきます。
悶黄は、茶葉の上に布を被せて蒸らすようにし、累計で10時間ほどかけるとのことです。

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あるきち

茶葉の持っている熱と水分によって、葉っぱが蒸れ、葉緑素が破壊されて茶葉が黄色くなるともに、ポリフェノールの一部が破壊されて味わいがまろやかになり、甘みなどの成分がより増加するという効果があります。

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わかば

うーん、黄茶って手間が掛かるお茶なんですね。

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あるきち

そうだね。緑茶を作った方がかなり楽。そういうこともあって、最近は悶黄をほとんどしていない緑茶っぽいものも出回っているそうです。でも、明らかに味わいが違うし、飲んでいて優しい口当たりなのは黄茶だね。上手に悶黄をしたものは、籠もった香りはなく、スッキリとした香りになるので、そうしたものを試して欲しいです。

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かおり

最近は機械化にも挑戦しているようだけれど、香りがなかなか思うようには行かないみたい。

 

霍山黄芽の特徴

ここまで書いてきた霍山黄芽の特徴をまとめると、

・芽を中心としつつも葉っぱの味わいもある黄小茶という高級茶の部類。
・味わいは緑茶の良さであるフレッシュさをある程度残しつつ、刺激を減らしうまみが強調されたお茶。
・伝統製法は少量ずつを手作りで製造するので、どうしても高価に。

ということになります。

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あるきち

黄茶は悶黄の工程の機械化がなかなか難しいので、どうしてもお値段は高くなりがちです。普通の緑茶よりも、ワンランク上の価格帯になるくらいで品質を見ると良いと思います。

 

霍山黄芽の淹れ方・飲み方

霍山黄芽は、上質なものは小さな新芽が綺麗な形で戻り、目でも楽しめるお茶です。
そうした姿を愛でられるよう、

・ガラスの器(グラス、急須)
・白磁の蓋碗

を使うと、より映えるのではないかと思います。

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あるきち

基本的に黄茶の淹れ方は緑茶と同じ淹れ方で良いと思います。

蓋碗での淹れ方をご紹介します。
蓋碗の大きさにもよりますが、3~4g程度の茶葉を使います。
茶葉を入れたら、茶葉がひたひたになる程度のお湯(85~90℃程度)を注ぎ、茶葉とお湯を馴染ませます。
一呼吸置いて、ある程度、茶葉に水分が浸透したら、お湯を注ぎます。

蓋碗から茶海にお茶を移す場合は、全部注ぎきった方が綺麗です。
が、2煎目からの味わいがガクッと落ちることも多いので、少しお茶を残すようにして、注ぎ足し注ぎ足しで淹れるようにすると、味わいがある程度一定になり、長く飲み続けることができます。

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フーマオ

茶芸としては邪道になってしまうかもしれないけど、少しお茶を残しておく淹れ方は自分で楽しむのならお薦めですよ。

 

霍山黄芽の保存

霍山黄芽は黄茶ですが、基本的には緑茶と似た性質があるので、できればフレッシュなうちに飲み切りたいお茶です。
一度開封した袋は、できるだけ中の空気を抜いた上で、きちんと密閉し、直射日光の当たらない冷暗所に保存しましょう。
また、上質なものほど茶葉が繊細で崩れやすく、崩れてしまうと雑味が出やすくなってしまいます。
できるだけ、完全な状態で保管できるよう、箱などに入れて注意深く取り扱いましょう。

長期保存したい場合は、封を切らない状態にして冷蔵庫や冷凍庫に入れておくと、色や味を比較的長く保つことが出来ます。
ただし、冷蔵庫や冷凍庫に入れたお茶は一度出したら、冷蔵庫・冷凍庫には戻さない方が良いです。
結露が起こって、お茶が台無しになることも多いからです。また、においの強いもののそばには置かないようにしましょう。

 

霍山黄芽は、日本にあまり入ってこないお茶ですが、黄茶の入門編としてもお薦めできるお茶です。
見つけたらぜひお試しください。

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