太平猴魁茶とはー特徴・定義・産地・製法・淹れ方・飲み方
太平猴魁茶(たいへいこうかいちゃ)
<太平猴魁茶>
読み : たいへいこうかいちゃ
中文 : 太平猴魁茶 tài píng hóu kuí chá
茶類 : 緑茶(烘青緑茶)
産地 : 安徽省黄山市黄山区(旧・太平県) ※地理的表示産品
品種 : 柿大茶
時期 : 4月中旬~5月下旬
茶器 : グラスを推奨
インパクトのある見た目に反して繊細な味わい
太平猴魁茶は、一度見たら忘れないようなインパクトのある外観をした緑茶です。
太く大きな平べったい茶葉は、他のどのお茶とも異なるインパクトがあります。
葉っぱは大きいし、名前もちょっと厳めしい感じだけど、味わいは繊細という、ちょっと面白いお茶だと思います。
ツンデレ系ですね。
太平猴魁茶の定義
太平猴魁茶は、中国の地理的表示(GI)産品として登録されています。
その定義書による、製品の定義は以下の通りです。
地理的表示製品保護範囲内(後述)の特定の自然生態環境条件の下で、柿大茶を主要茶樹品種とした茶樹の生葉を原料として選び、伝統技法を採用して製造したもので、“両葉一芽、扁平挺直、魁偉重実、色沢蒼緑、蘭香高爽、滋味甘醇”を品質特性とした茶葉。
国家標準『地理的表示製品 太平猴魁茶』 GB/T 19698-2008 より
茶樹品種については、原産地に独特の柿大茶(しだいちゃ)という地元の在来品種を使うことになっています。
別名を柿葉茶とも言い、葉っぱは少し厚く、葉っぱの形が柿の葉に似ていることからこの名前があるとされます。
太平猴魁の適性種とされ、製茶すると葉脈が紅い筋のようになります。
太平猴魁茶の品質特性としては、”一芽を二枚の葉っぱで挟むようで、平べったくて真っ直ぐで、しっかりとした茶葉で、色は青々とした緑で、蘭の花のような香りが高く、味わいは甘くて厚みがある”というものになっています。
太平猴魁は芽が二枚の葉っぱに挟まれるような形になっていて、曲がったりせず、真っ直ぐな仕上げになっています。茶葉自体には産毛もあるのですが、それはあまり目立たず、淹れたときのうまみとして出てきます。上質なものはちょっとトロンとした口当たりがあり、透明感のある蘭の花のような香りがあるものもあります。
うーん、なんだか見た目の印象と大分違いますね。大味なのかと思っていました。
なお、太平猴魁茶として製茶されるのは、5月初めの立夏頃までです。
それ以降は尖茶という別の名前で販売されます。
太平猴魁茶の産地
かつて、太平猴魁茶は太平県新明郷にある猴坑村、猴崗村、顔家村の3つの村だけで作られるローカルなお茶でした。
しかし太平猴魁の名声が高まるにつれ、周辺地域にも産地が拡大しています。
現在の太平猴魁茶は地理的表示産品であり、その保護範囲は、安徽省黄山市黄山区(旧・太平県)の行政区域内とされています。
2002年から茶業を振興するという目的で産地が一気に広がり、現在は黄山区内の数十の村で作られるようになっています。ただ、品質の点ではやはり原産地の村のものの評価が高く、特に猴坑村の太平猴魁茶はかなり稀少で、高額で取引されています。現地でも1斤6000元(500g・9万円)以上はするんじゃないかな。
お値段は厳ついんですね…orz
太平猴魁茶の製法
太平猴魁茶は、釜炒りで殺青(さっせい)し、炭火の輻射熱で乾燥させる、烘青(こうせい)緑茶と呼ばれるタイプの緑茶です。
まず、茶摘みを行いますが、太平猴魁の茶摘みは遅く、穀雨の前後になります。
茶摘みは一芯三葉で摘み、そのあと揀尖(てきせん)という工程で、良い葉だけを選別するとともに、一枚の葉っぱを外し、二枚の葉で芽が包めるような状態にします。
そのあとで、攤放(たんほう)を行って、水分を少し飛ばし、青みを抜きます。
殺青は釜炒りで行いますが、茶葉が崩れやすいため、力加減に注意をして行います。殺青が終わる前に、少し形を整えます。
殺青段階で大事なことは、芽と葉が繋がった状態を維持しなければいけないことで、注意深さが要求されます。
そのあと、最初の乾燥である「毛烘」を行います。
この段階で茶葉を軽く押しつけ、茶を平べったくし、さらに乾燥させてから、茶葉が芽を包むような形に圧力をかけて押しつけます。
ローラーのような網を使うこともあり、手作りで作った太平猴魁茶の表面に網目のような模様がついているのは、そのためです。
水分が少なくなると茶葉が脆くなってしまうので、そうなる前に適当な形状に徐々に形作っていきます。
そのあとに、足烘、少し休ませてから復焙という最終乾燥を行って、出来上がりになります。
なんだかすごく手間が掛かるお茶ですね。これは大変だ。
太平猴魁茶はすごく崩れやすい茶葉なので、出荷の時も大変。お茶屋さんでは、ピンセットを使って一枚一枚茶葉を袋詰めしたりするからね。手間はものすごく掛かるので、お値段高いのも仕方ないかな、という気になるね。もっとも、最近は一部を機械で作るものも出てきてますけど。ただ、味は全然違います。
なんか、野菜っぽいよね~
太平猴魁茶の特徴
ここまで書いてきた太平猴魁茶の特徴をまとめると、
・柿大茶という特殊な品種を用いたお茶で、大ぶりで印象的な茶葉。
・味わいは外観や名前と裏腹に、とても繊細で滑らかな口当たりと味わい。
・産地は拡大しているものの、原産地の村の手製のお茶の評価が高い。ただし、お値段はかなりする。
ということになります。
安いものもあるんですが、このお茶は良いのをぜひ飲んでみて欲しいですね。
太平猴魁茶の淹れ方・飲み方
太平猴魁茶は、大ぶりな茶葉が綺麗な形で戻り、目でも楽しめるお茶です。
そうした姿を愛でられるよう、
・背が高めのガラスの器(グラス、ピッチャー)
を使うと、より映えるのではないかと思います。
グラスでの淹れ方をご紹介します。
グラスの大きさにもよりますが、1~2g程度の茶葉を真っ直ぐな状態のまま入れます。
小さめのグラスの場合、茶葉がはみ出てしまうことがあります。その場合でも、茶葉を折ることは止めた方が良いと思います。そこから雑味が出たりするので、そのままの状態でいきましょう。お湯を注ぐと柔らかくなって、器の中に入りますので。
グラスに5分の1ぐらいのお湯(90度程度)を注ぎ、少しグラスをくるくる回しながら、茶葉とお湯を馴染ませます。
お湯を吸った茶葉から、お茶の香りがふわっと立ちのぼりますので、その香りを少し楽しんでください。
その後で、お湯をグラスに8分目ぐらいまで注ぎ、茶葉がクタッと沈んできたら飲んでいきます。
お湯が半分ぐらいまで減ってきたら、差し湯をします。
以後、だいたい、カップの3分の1ぐらいまで飲んだら差し湯をしていくようにすれば、味がなくなるまで飲むことができます。
背の高いグラスの方が映えると思うので、探してみてね。
太平猴魁茶の保存
太平猴魁茶は緑茶なので、フレッシュなうちに飲み切りたいお茶です。
開封したら、できるだけ早く飲み切るのが、緑茶を美味しく飲むコツです。
一度開封した袋は、できるだけ中の空気を抜いた上で、きちんと密閉し、直射日光の当たらない冷暗所に保存しましょう。
また、茶葉が非常に崩れやすく、崩れてしまうと雑味が出やすくなってしまいます。
できるだけ、完全な状態で保管できるよう、箱などに入れて注意深く取り扱いましょう。
長期保存したい場合は、封を切らない状態にして冷蔵庫や冷凍庫に入れておくと、色や味を比較的長く保つことが出来ます。
ただし、冷蔵庫や冷凍庫に入れたお茶は一度出したら、冷蔵庫・冷凍庫には戻さない方が良いです。
結露が起こって、お茶が台無しになることも多いからです。また、においの強いもののそばには置かないようにしましょう。
太平猴魁茶は、産地が限られており、手間の掛かるお茶なので、どうしても高価になってしまいます。
上質なものを飲む機会があれば、ぜひチャレンジしてみてください。