お茶の発酵はどのように起こるか?

前回見たように、中国茶の勘所は発酵にあります。
化学的な変化については、おおむね前回の通りなのですが、お茶は放っておけば勝手に発酵するわけではありません。
製茶の段階で、人為的に発酵を抑制したり、促したりしなければいけません。

カテキンと酸化酵素の在処(ありか)

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あるきち

お茶の発酵の話をきちんと理解するためには、植物の構造を知っておく必要があります。まず、植物細胞と動物細胞の大きな違いは分かる?

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わかば

えっ(汗)

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あるきち

まず、植物細胞には細胞壁というしっかりとした壁のようなものがあるね。それから、液胞と呼ばれる水と養分の詰まった膜で包まれたものがある。あとは、葉緑素があって光合成ができる。このへんは中学生の時に勉強したはずなんだけど・・・

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わかば

あーーー、その違いのことですか。もちろん知ってますよー。やだなー。はははは・・・

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フーマオ

(完全に忘れてた人の反応だな・・・)

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あるきち

で、カテキンというのは、この中の液胞の中にある。細胞壁に囲まれた中にね。一方の酸化酵素なんだけど、これは葉面(ようめん)だったり、維管束(いかんそく)にある。維管束、分かる?道管(どうかん)と師管(しかん)。

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わかば

(ヤバッ)えーと、それも中学校の時のやつですね。あー、なんだったかなー。理科は最近勉強してないから、すぐに出て来ないですね。んー。。。

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あるきち

まあ、大抵の大人は忘れているからね。。。道管は水を通す管、師管は養分を通す管。これをまとめて維管束というのだけれど、チャノキでいえば茎だとか葉っぱの葉脈。そこに酵素はあるんだよね。

カテキンと酵素を出会わせるには?

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わかば

(義務教育の理科って意外と高度だったのね・・・)えーと、そうなるとカテキンは細胞壁の中の液胞に入っているわけだから、酸化酵素と触れ合わせようと思ったら、細胞壁を壊して、外にカテキンを引っ張り出さないと行けないってことですか?

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あるきち

鋭い。その通りで、発酵を進めるためには何らかの形で液胞の中に入っているカテキンを外に出して、葉面や維管束にある酸化酵素と触れ合わせる必要があるんだ。紅茶だと、茶葉を揉み込んだり、刻むようにカットしたりして、細胞壁を壊し、茶汁のような形でカテキンを染み出させる。そうすると急速に酵素と触れ合って、酸化反応が起こって、急速に紅くなるんだね。

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わかば

そうなると、烏龍茶の場合は?

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あるきち

後で詳しく説明するけど、烏龍茶の場合は、葉っぱ同士をこすり合わせると、葉っぱの縁の部分だけ、傷が付いたりするので、そこから発酵が起こる。軽めに発酵させた烏龍茶の茶がらを見てみると、縁の部分だけ赤くて、真ん中は緑のままになっているのは、そういう理由だね。

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わかば

そうすると、発酵をさせたくない緑茶は・・・

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あるきち

揉み込んだり(揉捻)する前に、熱を加えて酸化酵素を壊しておくんだね。これを殺青(さっせい)というんだけど、それをやってから揉み込めば、酵素が働かないから、カテキンが出てきても色は変わらずに済むわけだ。

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わかば

なるほど!確かにこれは植物の葉っぱの構造の話をしないと分からないですね。最初は難しい話をするなぁと思ったんですけど、必要な話だったんですね。

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かおり

難しいと言っても、中学生で勉強する内容だけどね。

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わかば

うっ・・・(汗)

 

ポリフェノールが酸化して色が変わるという反応は身近な部分でも見られます。
たとえば、りんごの皮をむくと、むいた部分から少し果汁が出ますが、これが液胞の中に含まれているポリフェノールです。
それが空気と触れることで酸化し、色が変わります。色が変わっているのは、果汁が染み出た断面の部分だけですよね。
りんごの中には、カテキンの一種であるエピカテキンが入っているので、お茶と同じような反応が起こるわけです。

<今日のまとめ>
・お茶のカテキンは、細胞壁の中の液胞に入っている。
・お茶の酸化酵素は葉面と維管束にある。
・そのままだと接触しないので、発酵しないが、製茶の際に触れ合わせてあげることで、発酵が起こる。
・酵素が働かないようにするには、高温を加えて酵素を壊せばよい。これが「殺青」という工程である。

 

続く。

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