再加工茶-花茶、緊圧茶など再加工したお茶
六大分類で一通りのお茶の製法は説明が付くのですが、一度、荒茶として製造したお茶に再度手を加えるお茶があります。
ジャスミン茶のような花茶であったり、茶葉を固めた緊圧茶と呼ばれるものや、ティーバッグや粉末茶などの加工製品です。
これらについては、現在では再加工茶という定義ができており、その中で扱うことになります。
再加工茶の定義
中国では再加工茶を以下のように定義しています。
2.15 再加工茶(再加工茶) reprocessing tea
茶葉を原料とし、特定の技術を用いて加工され、人々の飲用あるいは食用に供される製品。
【出典】中華人民共和国・国家標準『茶葉分類』GB/T 30766-2014
今までのお茶との違いは分かります?
具体的な製法が書いてないですね。
そうだね。具体的な作り方は載っていない。あと非常に大事なのは、最初の部分。「茶葉」を原料とし、となっているよね。今までは「生葉」だった。
あ、本当ですね。「生葉」と「茶葉」の違いって・・・
「生葉」は英語だと”fresh leave”という訳が当てられている通りで、茶樹から摘んだ生の葉っぱね。で、茶葉というのは、製品だね。製茶を行って、一旦は荒茶(あらちゃ)という初期製品として完成したもののこと。
一度、製品として完成したものに、もう一度手を加えるのが再加工茶ということですね。
再加工茶の種類
再加工茶には4種類の製品があるとされています。
・花茶
・緊圧茶
・袋泡茶(ティーバッグ)
・粉茶
それぞれについて説明します。
花茶
茶葉にお茶の香りを移したお茶です。
ジャスミン茶(茉莉花茶)、白蘭花茶、桂花茶、柚子花茶、玫瑰花茶など、さまざまなお茶があります。
花茶は公式には以下のように定義されています。
4.7.1 花茶
茶葉を原料とし、整形、天然の香りの花での香り付け、乾燥などの加工技術を経て、生産される製品。
【出典】中華人民共和国・国家標準『茶葉分類』GB/T 30766-2014
天然の花の香りじゃないといけないんですね。
そう。合成香料などを使うことは認められていない。お茶への添加物を認めなかったり、意外と中国はお茶に関しては天然・自然のものにこだわる傾向があるね。
花茶は、お茶が香りを吸着しやすい性質を利用したものです。
お茶の表面には微細な穴が開いているし、香りの成分を吸着しやすい物質や構造になっているので、そこに花の香りが移るんだね。本来は花びらなどが入っていなくても、花の香りがするのが本来の姿だよ。
茶葉の方に花の香りが移っているんですね。一緒に花が入っていないと、香りがしないのかと思ってました。
視覚的には花が入っていた方が安心感はあるかもね。香りを付けることを「窨花(いんか)」と言うんだけど、これは花と茶葉を混ぜ合わせて、静置し、香りを移していく工程です。これを何回やるかで、茶葉に移る香りの強さが変わってきます。
一度で済むものでは無いんですか?
等級の低いものなどは、1回だけで済ませ、あとで花を追加して(これを「提花」と言います)、その花の香りに頼るやり方もあるね。高級なもの、たとえばジャスミン茶で一番上のグレードは「銀毫(ぎんごう)」と呼ばれるんだけど、銀毫の場合は花の香りを移す「窨花」を6回やり、さらに最後に花を加える(提花)ので「六窨一提」と呼ばれる作り方をします。花の香りを移すのは、そのたびにフレッシュな花を用意するので、6回分の新鮮な花が必要だから、手間とコストはとても掛かるね。
6回も香り付けするんですか!それは大変だ・・・
もっとも香りを何度も付ければいいかというと必ずしもそうではなくて、やはりお茶自体の味わいと花の香りのバランスをとることも必要だしね。なにより、花を付ける工程では、花の水分が茶葉に移るので、茶葉が蒸れてしまい、品質が低下するリスクも伴う。そう考えると、香り付けの回数が多ければ良いかというと、そうでもないかな。
ジャスミン茶はペットボトルもあって身近な気がしたんですが、奥が深いんですねぇ。
さらに花の品質もあるからね。ジャスミンの場合は、花が開くときに強い香りが出るから花が開く直前のつぼみを上手く揃える必要があるし、特に香りの強い、夏場の「三伏」の時期の花を狙うとか。原材料が茶葉と花の2つになるので、それぞれにこだわっていくと、なかなか深い世界だね。
さらに見映えの部分にも気を配ったのが、工芸茶ね。茶葉や花を紐などで結び合わせて、お湯を注ぐと花が開くような細工をしていて、インスタ映えするわよ。
映えだね、映え!
緊圧茶
緊圧茶は、茶葉を蒸気で蒸し上げたのちに、圧力をかけて成形したお茶です。
辺境へ販売されることの多かった黒茶に特に多いタイプですが、最近では白茶や烏龍茶、紅茶などでも緊圧をするお茶が出てきています。
体積が小さい方が輸送には便利だからね。
緊圧茶は公式には以下のように定義されています。
4.7.2 緊圧茶
茶葉を原料とし、篩分け、ブレンド、蒸気による蒸し上げ、圧力による成形、乾燥などの加工技術を経て生産される製品。
【出典】中華人民共和国・国家標準『茶葉分類』GB/T 30766-2014
緊圧茶でポイントになるのは、蒸気で蒸すところだね。熱と水分を加えて蒸すことで、茶葉からベタッとした成分が出て来て茶葉同士がくっつきやすくなります。その状態にした茶葉を型に入れたり、布で包んで重石の下に置いたりして、形を作るんだね。
一度乾燥させたお茶をもう一度蒸すんですね。なるほど。
蒸すということは、熱と水分を加えることになるので、これでお茶の中の成分が少し変わりやすくなるね。さらに圧力をかけて茶葉の細胞壁を壊す効果もあるので、酵素が残っていたりすれば発酵が進んだりする。緊圧はお茶の形だけではなく、品質も変えているんだね。
形を変えているだけじゃないんですね。熱と水分に圧力でお茶の成分を変える、と。
味がまろやかになるので、最近はその効果も含めて緊圧をするお茶も出てきているね。あとは、緊圧をすることで固めた内部のお茶は空気に接する部分が少なくなるので、保存が利くようになる効果もあるかな。
単純な形だけではなくて、色々な効果があるんですね。
袋泡茶(ティーバッグ)
ティーバッグも再加工茶になります。
公式な定義は以下の通りです。
4.7.3 袋泡茶
茶葉を原料とし、一定の規格への成型加工を経た後に、濾過材料を用いて加工製造された製品。
【出典】中華人民共和国・国家標準『茶葉分類』GB/T 30766-2014
ティーバッグは抽出を早くするために、茶葉を細かく刻んだりするので、それが”一定の規格への成型加工”だね。そして、濾過材料というのは、ティーバッグのバッグの部分である不織布などの袋のことだね。
粉茶
最後に粉茶です。
4.7.4 粉茶
茶葉を原料とし、特定の加工技術によって加工製造され、一定の粉末の細かさを有する製品。
【出典】中華人民共和国・国家標準『茶葉分類』GB/T 30766-2014
中国でも最近はすぐに溶けるクイックパウダーティーという新しいタイプの粉末茶だったり、抹茶を生産しているので、割と注目されている分野です。とはいえ、嗜好品として楽しむ場合にはあまり、縁が無いかも。
<今日のまとめ>
・再加工茶は、荒茶に手を加えたお茶の総称で、花茶、緊圧茶、ティーバッグ、粉末茶などである。
・花茶は茶葉そのものにお茶の香りを移すもので、お茶の持つ香りの吸着作用を利用したものである。
・緊圧茶は形状を変えるだけで無く、蒸気で蒸し、圧力をかける工程によって、成分と味わいの変化も生じる。
続く。