「お茶の基本」のまとめ-言葉の定義を確認しながら進めよう

ここまでプロローグを含めて、14本ほどの記事で 「お茶の基本」 を見てきました。
基本の話は、ここで一区切りにしたいと思いますので、ここまでの内容を改めて整理してみましょう。

お茶とは何か?

まず、学ぶ対象である「お茶」とはそもそも何か?ということを確認しました。

この記事で、「茶」には”広義の茶”と”狭義の茶”があり、”狭義の茶”とはすなわちチャノキ(カメリア・シネンシス)から作られるお茶であることを確認しました。

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あるきち

嗜好品として飲まれることが多いのは、狭義の茶、すなわちチャノキのお茶なので、このサイトではそこを中心にお話しします。

続いて、チャノキという植物とそれから作られるお茶の特徴について、こちらの記事で紹介しました。

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かおり

植物の”種”としては1つなんだけれど、大きく分けて2つの変種(中国種・アッサム種)と無数の品種があって、それぞれの個性が違うこと、中国には沢山の品種があることを説明したわね。

 

中国茶に多様性がある理由

これから学んでいく中国茶というのは非常に多数の種類があり、個性もさまざまです。
そうしたお茶を学んでいく上でのガイドラインになるものとして、”製法の違い”があり、それは大まかに分けて6つあるというお話をしました。

これが”六大分類”というもので、日本でも書籍や雑誌、Webなどで多数紹介されているのですが、少し本来の意味から違って伝わっていることもご紹介しました。
もっとも、”六大分類”は、あまりによく目にするものなので、曖昧な理解になってしまいがちですし、「知っていて何のメリットがあるのか?」と思う向きもあるでしょう。
そこで「そもそも、六大分類はなぜ大切なのか?」ということを、こちらの記事で確認しました。

この記事では、六大分類を分けている製法の違いと、大まかな特徴についてもご紹介しました。
これらを概観した上で、中国茶の多様性を生み出しているのは、”発酵”にあるというお話をしました。

もっとも、お茶の”発酵”というのは、私たちが一般的にイメージする”発酵”とは違い、酸化酵素による酸化反応であること。
その酸化反応を経て、カテキンなどのポリフェノールが変化して色合いが変わることや香りの成分が変化することなどをご紹介しました。

”発酵”は中国茶を理解する上で、まさに勘所です。
その発酵がどのようにして生じるのかを、植物細胞の構造や酵素のありかなどを踏まえて、こちらの記事でご紹介しました。

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わかば

このあたりの話は難しめだったんですけど・・・

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あるきち

そうだろうね。今までの中国茶の入門書だったり、入門者向けの紹介ではここまで踏み込まないからね。でも、ワインを学ぶ時に発酵の原理を説明しないことが無いのと同じで、この説明から逃げてしまうと、ふわっとした理解になっちゃうからね。何度か読み返していると、腑に落ちてくると思うよ。新しい概念を学ぶってのは、それなりに時間がかかるから。

 

六大分類と再加工茶

そのような発酵のメカニズムを説明した上で、六大分類のお茶の特徴を紹介するともに、新たに整理された花茶などの再加工茶という分類を紹介しました。

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わかば

今まで本に書いてあったことと違う内容もあって、ちょっとビックリしました。

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あるきち

そうかもしれないね。でも、これは個人が勝手に言っているわけではなくて、中国政府だったり国際標準化機構(ISO)が、そう言っているわけで。基本的に根拠はそれらの文書にあるので、「○○という本に載っていた」「○○先生が言っていた」「私が現地を見たら、こうだった」「長年の経験ではこうだ」という話よりは信憑性があると思うよ。本の内容は必ずしも正しいとは限らないし、一人の先生が見られる範囲には限界があるし、たまたま例外的なものを見た可能性も否定出来ないし。

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わかば

何を信じたら良いのでしょうね・・・

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あるきち

中国のお茶は今や学問になっているわけだから、体系的な積み上げがあるんだよね。それを上手く活用するのが良いんだと思う。そのためには、使われている用語の定義をきちんと確認しながら、全体像を掴むことが大事かな。

 

学ぶ上で大切なのは、用語の定義

ここまでの記事を読んでいただいて、色々と文書の引用が多かったことにお気づきかと思います。
何らかのものごとを学んでいく上では、体系立てて学ぶことがもっとも効率的ですが、その際に不可欠なものが用語の正確な定義です。

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あるきち

専門用語というのは、基本的にはちゃんとした定義があるはずなんだ。そうでないと学問にはならないからね。1つ1つの言葉の定義を、ハッキリさせて、それを積み上げることが必要だと思う。

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わかば

言葉の定義・・・ですか。

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あるきち

言葉の定義というのが一致していなかったら議論にならないから、本来はきちんと定義をオフィシャルな場で話し合って決めていくべきなんだよね。2000年頃まで、中国の茶業界ではこのようなものが不十分だった。そのため、「人によって言うことが違う」という現象が起こりがちだったんだけれど、中国の茶業が急速に成長する中で、ルール作りをするようになってきた。それが、これまで引用してきたさまざまな文書だね。

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わかば

確かに、国などが規格を作っていたという話でしたね。

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あるきち

そう。中国は割と文書で管理する国なので、根拠となる文書が色々出ているんだよね。「国家標準」と呼ばれるような国の規格書だったり、あるいはお茶の種類に関しては、地理的表示(Geographical Indication・略してGI)と呼ばれる仕組みを導入して、産地や製法、品質の条件などを決めるようになっている。

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わかば

じーあい、ですか?

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あるきち

ヨーロッパなどでは農産品などで一般的なものなんだけど。分かりやすい例だとシャンパンがあるね。発泡性のワインのことだけれども、”シャンパン”という名称が使えるのは、フランスのシャンパーニュ地方で製造され、特定の品質を持ったものに限られる。こういうルール決めをしているのがGIで、世界的にはこのような形で農産物を保護しているんだ。ワインを勉強すると、フランスのAOCとか、そういうのを勉強すると思うけど、それと同じ。

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わかば

それも文書になっているんですか?

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あるきち

そう。文書になっている。だから、中国茶にはよく「本物」とか「偽物」という話が出てくるんだけど、今までは主観に過ぎなかったものが、現在では明確に本物と偽物の線が引けるようになったんだね。

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わかば

そういうの、あんまり見たことないですけど・・・

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あるきち

整備されはじめたのが20世紀末頃だからね。まだ日本に紹介されてない部分が多いから。でも、今の中国茶はこのルールで動いているので、じきに一般化すると思う。今後、お茶の紹介をしていくんだけど、その紹介は基本的にはGIの定義を参考にしながらして行く予定だよ。

 

ひとまず、「お茶の基本」はここで一区切りとします。
ここまで紹介してきたお話をもとに、具体的なお茶の紹介などをして、よりお茶への理解を深めていくようにしたいと思います。
「お茶の基本」のページは適宜、加筆や写真の追加をしていきますので、何度か読み返しているうちに、きっとお茶の全体像が掴めるのではないかと思います。

 

「お茶の基本」の記事一覧

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