白茶-わずかな発酵で香りと甘みを引きだしたお茶
六大分類の茶類、続いて白茶です。
白茶の定義
中国における白茶の定義をご紹介します。
白茶は、ほぼ中国、それも福建省の一部地域だけで作られている特殊なお茶でしたが、最近、世界各地で生産されることも増えてきています。
そのようなこともあり、現在、国際標準化機構(ISO)でもWhite teaの基準を作る方向で検討を進めています。
2.12 白茶(白茶) white tea
特定の茶樹品種の生葉を原料とし、萎凋、乾燥などの加工技術を経ることによって生産された製品。
【出典】中華人民共和国・国家標準『茶葉分類』GB/T 30766-2014
白茶は、”特定の茶樹品種”とあるように、品種を選ぶお茶です。
というのは、白茶というのは決められた製法で作っても、枯れ葉のような色合いにしかならないのです。
”白茶”は基本的には産毛のハッキリと見える品種(主に大白茶種・だいはくちゃしゅ)で作るために、外観が白っぽく見えるわけです。
また、製法としては”不炒不揉”と言われるように、殺青もしなければ揉捻もせず、萎凋と乾燥のみで製造されます。
それゆえに”シンプルな製法”と言われがちなのですが、実際に上質な白茶を作ることは簡単ではありません。
萎凋の時は、基本的に放置することしかできません。だから、茶葉の状態を確認した上で、風の通り具合や陽の当たり方、あるいは湿度や温度、風向きなどを見て、どのくらいの時間置くか、あるいはどのくらいの厚みで茶葉を広げるか、を作り手の経験に基づいて調整する必要があります。茶葉に対して直接働きかけができない分、経験に基づく塩梅(あんばい)が問われるお茶と言えますね。
元々は福建省の福鼎市や政和県などの一部の地域で作られるローカルなお茶で、香港などへの輸出用とされていたお茶だったんだけれど、最近は国内でも人気が急上昇していて、雲南省の月光白など新しい白茶も出てきているのよ。
白茶の発酵
紅茶は、揉捻や揉切で、酵素とポリフェノールを接触させていましたが、白茶はどうなんですか?
それはとても良い質問ですね。白茶の場合は、生葉に力をかけたり、揉み込んだりせず、基本的には置いておく”萎凋”だけで発酵をさせます。日に晒す日光萎凋をメインにしたり、室内に置いておく室内萎凋が主だったりと、産地によって製法に少し違いはあります。が、共通するのは、萎凋をすると水分が抜けていくということです。お茶の葉の細胞は、水分が入っていると、パンと張った状態になっているけれども、その水分が抜けていくと・・・
萎(しお)れますね。なるほど、それで萎凋なんですね。
そう。萎れると、細胞がグニャッと曲がって細胞壁の一部が壊れる。そこからポリフェノールが外に飛び出る。酸化酵素は葉面や葉脈のところに多くあるので、葉の縁だったり葉脈の部分だけが、わずかに赤くなる。白茶の茶がらを見ると、葉脈に沿って紅くなっていることがあるんだけど、それはこの理由だね。
ほほー。酵素がどこにあるかというのが分かっていると、発酵の仕組みも分かりやすいですね。
白茶の製法でもう1つポイントになるのは、殺青を行わず、乾燥だけで終わっているということだね。乾燥温度があまり高くなかったりすると、酵素が残存している可能性がある。それを根拠に、「白茶は置いておくと、自然に発酵が進む。寝かせることで変化する」という話も出てくる。実際、作りたての白茶は味わいが薄く、少し青みを感じることが多いんだけど、少し時間が経った白茶は、青みも抜けて水色も少し濃くなり、美味しくなっていることは多いよ。
お茶は、なんでも新茶が良いのかと思っていましたが、そうでもないんですね。
最近は、寝かせた白茶(=老白茶・ろうはくちゃ)というのが中国ではブームになっていて、コンパクトに固めた餅茶(もちちゃ)タイプのものも人気になっています。キャッチコピーは、”一年茶、三年薬、七年宝”というものだね。1年目はお茶だけど、3年寝かせると薬効が出てきて、7年目にはお宝になりますよ、という。
へぇ~。この円盤みたいなのがお茶なんですか?どうやって飲むんだろう?
茶葉が折り重なるように固まっているので、少しずつ周りから剥がしていくイメージかな。固めることを緊圧(きんあつ)というんだけど、蒸気を茶葉に当てて、柔らかくしてから圧力をかけて固める。蒸気が当たるので、水分と熱が補給されてお茶の成分は変化しやすい状態になる。さらに、圧力をかけるということは、茶葉の細胞壁も壊れることになるから、茶汁が出て発酵が進む効果もある。なにより、コンパクトになって、お茶の保管場所に困らなくなるし、年月を経ても美味しく飲める、どころか価値が上がるかもしれないという話だから・・・
抵抗なく積み茶できますね!
(積み茶なんて言葉、どこで覚えたの・・・)
最近、急激に人気が高まっているのが、このタイプの白茶ね。
白茶の種類と特徴
白茶の特徴はひとことでは言いにくい部分があります。というのは、まず、葉っぱの部位によって味わいが大分違います。
部位、ですか?
たとえば、芽だけで作るものが白毫銀針(はくごうぎんしん)ですが、これは淡い水色ながら芽の甘みとうまみが前面に出たお茶になります。一芽二葉程度で作るのが、白牡丹(はくぼたん)というお茶ですが、これは芽の甘みに葉っぱの香りが組み合わさった、しっかりした味わいと香りになります。さらに下の方の葉っぱを使う貢眉(こうび)や寿眉(じゅび)などは、番茶に近い味わいのお茶になります。
芽の味、葉っぱの味というのがあるんですね。飲んで分かるものかしら・・・
かなり差があるので、同時に並べて飲むとすぐに分かると思います。
もう1つの”白茶”
黄茶同様、「白茶」を名乗るもう1つのお茶があります。
それは、茶葉が白い品種を用いた緑茶。これを「白茶」と称して販売していることがあります。
これまた、紛らわしいですね。”白茶”という名前でも、作り方が白茶ではないケースがあるということですか?
そうだね。一番有名なのは、安吉白茶(あんきつはくちゃ・浙江省)というお茶かな。白葉一号(はくよういちごう)という。40年ぐらい前に新しく見つかった白っぽい品種で作られるお茶なんだけど、今や超人気ブランドになっています。
確かに。葉脈のところ以外はかなり白いですね。
このお茶は、アミノ酸の含有量が普通の緑茶の3倍ぐらいあるので、甘みが強いんだよね。最近は人気のお茶になっているので、同じ品種を導入した天目湖白茶(てんもくこはくちゃ・江蘇省)や正安白茶(せいあんはくちゃ・貴州省)などのお茶も生まれています。品種が一緒なので、味は似てるね。
黄茶と白茶は、緑茶だったりすることもあるということですね。これは覚えておかなきゃ。
<まとめ>
・白茶は、萎凋と乾燥のみで作られ、殺青も揉捻もしない製法である。
・萎凋をしているときに水分が抜け、自然と細胞壁が壊れることにより、酵素と接触してわずかに発酵するお茶である。
・白茶は最近、寝かせることができるという特徴などから、人気の茶種になっている。
・新しいタイプの品種的な白茶(製法としては緑茶)も出ているので、要注意。
続く。